小田利勝・野上智行・浅田 匡・小石寛文
神戸大学発達科学部人間科学研究センター
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要 約
ライフスキル(life skills)という用語は、社会老年学や老年(人)心理学、もっと一般的にいえばエイジング研究(aging studies)の領域では国内外ともに馴染みが薄いが、高齢期あるいは高齢者のライフスキルに関する問題は、サクセスフル・エイジングに関するこれからの研究が取り組むべき重要な課題である。本稿では、ライフスキルに関する研究の動向を概観するとともにライフスキルの概念について整理・検討し、高齢期の適応課題および適応方法の観点からサクセスフル・エイジングに必要とされるライフスキルについて考察した。ライフスキルは、社会の期待や要求に応えながらその人自身の必要や欲求を充足させ、逸脱的行動をすることなく社会的に統合されて生きてゆくための課題解決能力ということができ、それは、技術的ライフスキルと心理社会的ライフスキルとに大別しうる。高齢期に必要とされるライフスキルは、老化および老化に伴う変化と自分の置かれている状況を正しく知り、そのことを受け容れる状況認知のスキル、社会的期待や要求を知る役割認知のスキル、役割遂行のスキル、代替活動のスキル、生活習慣や選好を継続的に維持できるスキル、生活目標を組み替えたり新たに設定するスキル、環境資源を活用するスキル、環境を能動的に処理・改変するスキル、離脱のスキル、折り合いのスキル、葛藤処理のスキルなどである。これらのスキルは、それ自体は一つの完結した固有のライフスキルというわけではない。それらは、それぞれの課題に対応させて表現したものであるから、それらライフスキルを支える個別のスキルあるいは下位スキルの統合体ともいうべきものである。高齢期に必要かつ有効なライフスキルに関する研究を通じて体系的なライフスキル教育のプログラムを検討することが、サクセスフル・エイジング研究のこれからの課題である。