中山 修一
神戸大学発達科学部 造形表現論講座
要 約
1996年はウィリアム・モリス没後100年にあたり、彼の生涯を回顧する展覧会やシンポジウムが英国のみならず、日本を含む様々な国で開催された。この記念すべき年に際して、私は、没後の100年間にあってモリスがどのように解釈され、受容されてきたのかを主題に選び、考察を試みることにした。
本論文において私は、まず第1節において詩人としてのモリスを、続く第2節において政治活動家としてのモリスを、そして第3節以降において、デザイナーとしてのモリスが過去100年の英国デザイン史のなかにあってどのような役割を担ってきたのかを取り上げ、論じている。
結果として、70年代のクラフツ・リヴァイヴァルから90年代のグリーン・デザインへとつらなる工芸運動には、明らかにアーツ・アンド・クラフツとモリス思想が底流に流れていたわけであり、モダニストの歴史家によって従来から特定されてきた「モダン・デザインの先駆者」としてのモリス像とは別のモリス像が判明することになった。
キーワード: ウィリアム・モリス、 英国デザイン、 20世紀