神戸大学発達科学部研究紀要Vol. 5(2):pp  -  , 1998.

退職に関する新たな視点とサード・エイジの生活課題

―高齢期のライフスキルとサクセスフル・エイジングに関する実証研究へ向けて―

New Perspectives on Retirement and Life Tasks in the Third Age: A Preliminary Work toward Studies on Life Skills in later life and Successful Aging

小田 利勝

神戸大学発達科学部 人間科学研究センター

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要 約

 サクセスフル・エイジング(successful aging)や老後生活に関するこれまでの研究の多くは、就業・退職形態についてはあまり注意を払ってこなかった。老後生活とは退職後の生活であり、退職は老後生活の始期を告げるライフイベントであることを暗黙の了解事項としていたともいえる。一方、就業・退職形態(の多様性)そのものに関する研究は枚挙に暇がないほどである。社会老年学(Social Gerontology)における退職研究やサクセスフル・エイジングの研究に就業・退職形態に関する研究の成果が生かされてこなかったということである。しかし、最近になって、就業・退職形態の多様性をエイジング研究に反映させる試みが現れてきている。その鍵概念となっているのがサード・エイジ(the third age)である。本稿は、以下のような章・節の構成で、近年の就業・退職形態の動向とそれに関する先行研究およびサード・エイジに関する論議を検討し、サクセスフル・エイジングへ向けたサード・エイジにおける生活課題に関してライフスキル(life skills)の観点から考察を試みたものである。1.退職と高齢者の社会的役割、(1)成人の職業役割と高齢者の「役割なき役割」、(2)今日における高齢者の社会的役割/2.退職制度と退職形態の多様性、(1)退職制度の変遷、(2)高齢化の進展と就業・退職形態の多様化/3.サード・エイジの概念とライフスキル、(1)就業・退職形態の多様性とサード・エイジの概念、(2)サード・エイジの生活課題とライフスキル/おわりに。

 


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