高度教員養成セミナー 報告

第2回 報告


題目
幼小接続期の子どもの「数」の認識に基づく援助・指導を考える
講師
中橋 葵(京都文教大学講師)
会場
遠隔(Zoom)
日時
2020年11月13日(金)17:00~
報告
本講演では,幼小接続期の子どもの「数」の認識に基づく援助・指導を考えることについて解説された。特にサビタイジング(数えることなく瞬時に数を認識すること)とサビタイジングを基盤とする認識(数の集合を全体や集合を構成する部分として捉えることにより瞬時に数を認識すること)に着目し,小学校における数の合成分解との関わりについて示唆している。
幼小接続の発達と学びをつないでいくためには,保育者の見とりを支える資料の作成とスタートカリキュラムの検討・実践が必要としている。そのためには数をまとまりとして捉える経験と全体と部分に着目する経験が必要である。幼小接続期における幼児期での経験が重要である。
幼児期におけるどのような経験が必要であるかを学んだことにより,小学校算数における見方を獲得するために教育者として見方を育む指導が必要であることを感じた。(人間発達専攻 M1 戸川晴菜)

第3回 報告


題目
教育実践につながる基礎研究の位置づけの工夫
講師
辻 弘美(大阪樟蔭女子大学・ 教授)
会場
遠隔(zoom)
日時
2020年12月3日(木)13:00〜
報告
本講演では,先生ご自身の経験や研究に基づき,読みの能力の基礎となる言語(音韻)から乳幼児のコミュニケーション,社会認知と展開した中での研究についてや,実践研究における学びについてのお話があった。
研究者として,協力者や実践者の現状を把握するとともに,情報共有を欠かさず,実践者の視点の疑問に適切に対応し,次の課題につなげることを心得ているというお話から,常に研究が現場にどのようにつながっていくかという視点を持つことは,新しい課題をもつ機会になることが分かった。
また,言葉の役割は(①基礎的学習の源,②社会的なこころをつくる,③クリエイティブな心を作る)があり,③については子どもは仮説検証と確立統計に基づいた判断を行っているという仮説のもと,子どもたちの観察場面などにおける段階について解説された。子どもたちを取り巻く人的環境について,子どもがもっと試したくなる,気づきや発見を共有したくなる言葉かけは,子どもたちの学びのプロセスにおいて非常に重要であることを再認識した。(人間発達専攻 M2 大島菜苗)

第4回 報告


題目
子どもの足脚部の発育発達と障害
講師
上田 恵子(畿央大学准教授)
会場
ZOOM
日時
2020年12月4日(金)16:30~18:00
報告
本講演では,足脚部の障害の原因となる足の歪みや,その予防としての靴の役割などを解説された。日本では外反母趾,内反小趾,外反偏平足といった足のトラブルから,足脚部の障害が発生する人が多く見受けられる。サイズが合わなかったり,かかとが潰れている靴など,足に適していない靴を履くことによってそのトラブルは生じる。中敷きを取り出し,足に当ててみて0.5cmから1cmほど余裕がある靴が,足に適しているといえる。対してヨーロッパの子どもたちは,小さい頃から紐靴,ハイカットの靴を履き,踵骨が歪むのを防いだり,実際に本人が靴屋で足を入れてからでないと靴を購入することができない。このように,ヨーロッパでは靴の機能性が着目され靴選びが慎重であるが,日本ではファッション性に着目する傾向にあるため,足の大切さへの認識が低いことが伺える。子どもは足が成長していくので,3歳までは3か月ごと,3歳からは6か月ごとに足が靴に適しているかチェックする必要がある。しかし,保護者は大きいサイズの靴を購入し,できるだけ子どもに長く履かせようとする。適していない靴を履き続けることのデメリットを保護者に伝えたり,足育を推進していくことで,子どもの足を障害から守り,子どもの足脚部を美しく育てていけるような教育が行われていくべきである。(人間発達専攻 学び系B M1 南原圭吾)

第5回 報告


題目
「キャリア教育を考える」
講師
平井 威(明星大学)
コメンテーター
黒川 陽司(神戸大学附属特別支援学校)
会場
鶴甲第2キャンパス D-room(A棟1階)
日時
2020年12月28日(月)13:00~
報告
本講演では,①「進路研」(養護学校進路指導研究会)の学びと東京都特別支援学校の進路指導のあゆみ ②知的障害特別支援学校におけるキャリア教育の課題 ③知的制約のある人たちのキャリア発達とライフコースについて知識理解を深め,考察と意見交換を行った。併せて,神戸大学附属特別支援学校の進路指導の実際について概観を捉えることができた。キャリア教育とは「社会的・職業的自立に向けて必要となる力を育てる」教育である。就職・就業することへの環境の激変,自身の資質の未成熟,精神面での成長や発達の停滞,モラトリアム志向等,そこには,多くの課題がある。学校のキャリア教育に求められることとして,将来社会の一員として,自立した生活や自分らしい生き方をするための4領域8能力の育成に整理されている。人間関係形成能力(自他への理解,コミュニケーション),情報活用能力(情報収集と探索,職業理解),将来設計能力(役割把握と認識,計画実行),意思決定能力(選択,課題解決)である。東京都の特別支援学校におけるキャリア教育の具体的な取組として,小学部段階からの視点による見直しや改善,「8能力論」に基づく「キャリア発達段階・内容表」の試案と実践,新たな作業種の導入,企業や地域と連携した就業体験活動,各種検定制度の開発・導入等が展開されている。又,「オハナ農園」の取組が紹介され,農福連携等推進ビジョンや生涯学習の推進の方向性も示された。離職問題や反社会的行動等の課題もあり,就職するだけが自立の手段と考えるのではなく,世帯分離や余暇活動,高等教育機関での学び等,自分らしい充実した暮らしをどのように構築していくのかもキャリア教育の重要な位置づけであることが示された。(学び系C 1年履修コース 中山麻里)

第6回 報告


題目
「変動する大学入試――資格か選抜か――」
講師
伊藤実歩子(立教大学教授)
会場
遠隔(Zoom)
日時
2021年1月22日(金)15:10~
報告
本講演では,伊藤先生が編著者である『変動する大学入試――資格か選抜かヨーロッパと日本』をもとに,ヨーロッパの大学入試,特にオーストリアを例に解説された。オーストリアの試験である統一マトゥーラには,歴史的伝統的な口述試験があり,高校教師が大きく関わることからも,日本の共通テストとは異なる点が多く見受けられた。日本の大学入試と比較することで,高大接続の問題について相対化できる視点を提供していただいた。ヨーロッパでも入試改革がまさに進められているところであり,資格試験か選抜試験かという違い,「公平性」に対する捉え方の違いが浮き彫りになった。高校生が学習の意味や意義を理解し,大学での学修の意欲を高め保持し,高校の学習の成果を保障しながら,大学の学修・研究にスムーズに入っていくためには,大学の定員や学費,格差の問題,大学とは何かという根本的な問いに向かっていく必要がある。(人間発達専攻 M1 勝冶友紀子)