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2008年度「私の研究」交流会 ~小さな一歩から大きな一歩へ~

以下のような「私の研究」交流会を5月15日 (木) に開催いたします。人間環境学科にAO入試で入学した学生の発表を含み、参加者のみなさんとの質疑応答を通じて、「私の研究」を通じた交流ができれば幸いです。

お時間のある方は、ぜひご出席ください。

蛯名 邦禎

開催について

日時
2008年5月15日 (木) 10:00~12:30 (発表)、13:30~15:00 (特別セミナー)
会場
神戸大学発達科学部 A325 (A棟3階)
対象
どなたでも参加できます。
参加方法
当日、直接、会場へお越しください。
企画
神戸大学発達科学部人間環境学科 探究マインド応援プロジェクト (代表: 蛯名)
協力
神戸大学 サイエンスショップ
お問い合わせ先
探究マインド応援プロジェクト 蛯名 邦禎 <ebina@【続けて「kobe-u.ac.jp」を入力してください】> または、サイエンスショップ 橋口 典子 <nhashi@radix.h.【続けて「kobe-u.ac.jp」を入力してください】>

プログラム

発表 (発表10分、質疑応答5分)

時間 内容
10:00~10:05 あいさつ (人間環境学科 探究マインド応援プロジェクト代表 蛯名 邦禎)
10:05~10:20 渡邉 千鶴 (人間発達環境学研究科 田中研究室 研究員)
「二次元有機伝導体におけるマルチモード・パイエルス状態の安定性」
10:20~10:35 安藤 未帆 (人間環境学科 1回生)
「アゾラに共生するラン藻の窒素固定における光の影響について」
10:35~10:50 井上 裕士・姫路高校生物部 (人間環境学科 1回生)
「姫路市大塩地区のノジギクの品種を調べることによる牧野富太郎が見たノジギクの推測」
10:50~11:05 神谷 麻梨 (人間環境学科 1回生)
「出前出張授業」
- (休憩)
11:15~11:30 長屋 優子 (人間環境学科 1回生)
「ニンジンの組織培養実験」
11:30~11:45 丸山 航 (人間環境学科 1回生)
「水と合成洗剤の違い ~植物の成長への影響~」
11:45~12:00 久嶋 和代 (人間環境学科 4回生 社会環境論コース)
「農業を中心とする共同体」 (平成19年度「人間環境学総合演習」優秀研究)
12:00~12:15 小杉 由美加 (人間環境学科 4回生 自然環境論コース)
「Millerの実験の再現」 (平成19年度「人間環境学総合演習」優秀研究)
12:15~12:20 講評

特別セミナー

時間 内容
13:30~15:00
講演者
Jewgeni Starikov (エフゲニー・スタリコフ、ドイツ・カールスルーエ研究センター)
題目
"Enthalpy-entropy compensation - its significance for biophysical chemistry"
「エンタルピーとエントロピーの補償関係―生物物理化学における重要性」
要旨

Our recent results on the entropy-enthalpy compensation will be discussed, with the special reference to protein folding, enzymatic action, molecular motors and DNA duplex melting.

エントロピーとエンタルピーの補償関係に関する我々の最近の研究成果を紹介する。得られた結果は、タンパク質の畳み込み、酵素反応、分子モーター、DNAの二重螺旋融解などの現象を説明する上で有用である。(講演は英語で行われます。)

発表 (10:05~12:15) の要旨

渡邉 千鶴 「二次元有機伝導体におけるマルチモード・パイエルス状態の安定性」

近年、電気を通す性質を持つ有機化合物 (有機伝導体) の研究が盛んになっています。私は、有機伝導体の“柔らかい”という性質から生じる金属絶縁体転移について調べていました。ある有機伝導体は、高温側では分子の配列が一様に並んで金属のように、低温側では分子の配列が自発的に変化し絶縁体のように振る舞います。その有機伝導体における絶縁体状態 (パイエルス状態) について数値解析をすると、一つの単純な分子配列のパターンよりも、分子の配列のパターンが無限に存在するマルチモード・パイエルス状態と呼ばれる状態の方が安定であるという、従来の予想と違う結果が確認さています。しかし、実際にマルチモード・パイエルス状態を示す物質はみつかっていません。私の研究では、二次元有機伝導体におけるマルチモード・パイエルス状態を阻害する効果として、圧力や電子-電子相互作用の影響を考え、マルチモード・パイエルス状態の安定性について解析しました。

安藤 未帆 「アゾラに共生するラン藻の窒素固定における光の影響について」

アゾラと共生しているラン藻は、窒素固定をする。私は、今回アゾラに当てる光の量を変えることで、共生ラン藻の窒素固定が活発になるのではないかと考えた。アゾラは有機物を共生ラン藻に与え、共生ラン藻は窒素固定で作った窒素化合物をアゾラに与える。そこで、いくつかの仮説を立て、それを元にどれだけのアンモニウムイオンを放出するか、実験を通じて推測した。現在、ラン藻が行うこのサイクルは、一部の研究者からは、ラン藻が放出するアンモニウムイオンを農業における肥料の代替物として利用する研究も行われており、とても注目されている。今回の実験では、ラン藻が放出するアンモニウムイオンだけでは肥料の代替物は成り立たないという推論に達したが、今後、更なる研究を通じて肥料の代替物として実用化されることを期待したい。

井上 裕士・姫路高校生物部「姫路市大塩地区のノジギクの品種を調べることによる牧野富太郎が見たノジギクの推測」

私は姫路高校生物部で短日処理による兵庫国体に向けてのノジギクの早期開花実験をした。そして無事、兵庫国体までにノジギクを開花させることに成功した。

しかし実験結果の中に気になるデータがあった。赤や黄色の花びらがあったり、地域毎に花びらの枚数・全長と中心部の比率などがちがっていたことだ。そして私はノジギクには多くの品種があると考え、それを考察し、牧野さんが見た野生のノジギクを推測しようと考えた。

大塩地区のノジギクの9種類について、牧野さんが見た野生のノジギクがどれなのかを考えてみると、結果より短日処理の効果・花の特徴で見ると原種だと思われる。しかし葉についてのクラスター解析を行った結果東みお東側の方がより近いのではないかと思った。よって、牧野さんが見た野生のノジギクは原種か東みお東側のノジギクだと考えた。今後は東みお東側について短日処理や花の特徴について調べることが必要だと思われる。

神谷 麻梨 「出前出張授業」

私は中学高校の6年間、科学クラブに所属していました。クラブの活動の中で、特に私が取り組んだ「出前出張授業」を紹介致します。全部で12講座ありますが、その中から2講座を発表致します。

「いのちの誕生を見よう」
メダカが卵から孵化する瞬間を、手作りの顕微鏡で観察する講座です。命の誕生に立ち会う体験を通して、命の尊さを共に感じることが出来ます。絶滅危惧種となったメダカの生態についても話し、水辺の環境を共に考えます。
「暗闇の恐竜 ~恐竜って不思議だね~」
オーストラリアの恐竜についての講座です。歯や足跡のレプリカや化石を使い、草食恐竜と肉食恐竜の違いを比べたり、地層や化石の出来方や、恐竜の生態について話し、今の生き物とのつながりを考えます。足跡を当てるクイズをしたり、恐竜の骨格パズルもつくります。

長屋 優子 「ニンジンの組織培養実験」

ニンジンの形成層を用いて、それを脱分化、再分化させ元のニンジンと全く同じ固体を作ることを目的とした実験。

今回は時間と設備がなかったため元の固体を作ることは出来ませんでしたが、再分化させ、根や葉を形成することに成功しました。

また、消毒時間や培養温度を変化させることにより、どのようにすると実験の成功率があがるか調べました。

丸山 航 「水と合成洗剤の違い ~植物の成長への影響~」

自然環境問題の水問題 (水質汚染) に関して研究しようと思い、水質汚染の原因の1つと考えられる合成洗剤の植物の成長への影響を、水と比較して研究しました。

研究内容は、オクラの種子を濃度別の合成洗剤水で育成し、それぞれの出芽率・伸長度合いを比較するために対照実験するというものです。

結果、濃度が大きくなるにつれて成長度が小さくなりました。

この実験からでは、はっきりとした理由はわかりませんが、考察としては、合成洗剤が直接植物体に成長の阻害を及ぼした。または、浸透圧の差により種子が十分に吸水しなかったことが考えられます。

今回の研究は測定方法から考察にいたるまで未熟なところがたくさんありましたが、私がこれから行っていく研究の先駆けになればと思います。

久嶋 和代 「農業を中心とする共同体」

近年、日本の農業は衰退してきている。職業として農業を選択する人も、他の業種と比べて少ない。農業は農地の近くに居住地を限定し、農村は不便であることが多い。また職業としての農業は他業種より肉体的に過酷かもしれない。収入も会社員より少なくかつ不安定であるかもしれない。しかし、企業勤めの過労による心身の衰弱や、働いても生活に十分な収入を得られないワーキング・プアなど近年の労働状況は深刻で、いかなる職業にも困難はつきものであり農業だけがつらい職業ではない。農業離れが進む一方で、家庭菜園など趣味で農作業を行う人は増加している。これらを考えると、農作業が農業離れの直接の原因ではないのではないかと疑問を持ち、なぜ人々は農業から離れてしまうのか、実際に農村を尋ねて探ってみた。

小杉 由美加 「Millerの実験の再現」

アメリカの化学者、スタンリー・ロイド・ミラーは、大学院生であった当時行った「ミラーの実験」で一躍有名となった。この実験は、当時原始大気と想定されていた無機物であるアンモニアやメタンなどの還元型大気と呼ばれるものに、火花放電による高エネルギーを加えることで、有機物 (特にアミノ酸) を生成するというものであり、生命の起源を探究する上で歴史に残る実験となっている。しかし、その後、地球の原始大気はこの実験の前提である還元型大気ではなく、酸化型大気であったのではないかという意見が上がった。研究が進められていく上で、ミラーの実験が言う生命の起源説は、間違いではないかという研究者の意見が今や大半をしめている。今回私は、自分達の手で今一度、無機物から有機物を生成するという画期的な発見であったミラーの実験を再現すること、また、その正しさを自分なりに論評することを目的とする。

Updated: 2009/03/13 (Fri) 14:12