神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間行動専攻 【博士課程前期課程】 行動発達論コース/【博士課程後期課程】 行動発達論分野
行動の発達・適応を多角的に究明する分析力と問題解決能力を磨く
高度情報化や少子高齢化における現代社会の課題は,本質的には人間行動の問題であり,これらの課題の解決には,人間行動が年齢とともにどのように発達し,それが社会・環境へどのように適応しているのかの仕組みや原理を理解する必要があります。このコースでは,社会科学及び自然科学の両面から現実のさまざまな人間行動を多角的に捉えるために老年学(ジェロントロジー)・運動老年学・社会学・応用生理学・身体運動科学・行動適応学などの多分野の研究領域を設け,人間行動の加齢に伴う発達や環境への適応に関わる課題を学際的観点からアプローチできる人材を養成します。
行動発達論コースでは,以下に示すような学際的・総合的な4 つの具体的な学習目標を設定しています。
- 人間の行動を生体メカニズムから社会・文化的行動まで総合的に理解する能力を身につける
- 人間の行動を発達論的観点と社会・文化的観点から分析的に理解する能力を身につける
- 人間の行動を自然科学と社会科学の両面から観察・解明する方法を習得する
- 人間の行動と環境との関係についての理解を深める
これらの学習目標を達成するため,身体,心理,社会に関わる発達と適応に関する諸現象を科学的に捉え,各メカニズムを解明するための分析能力を基本として,問題点の抽出と改善策を提案できる総合的な研究能力の習得を目指します。現代の人間や社会が抱えている多様な課題に情熱を傾けて意欲的に取り組む学生,そして人間行動の発達に関わる未知の分野を積極的,自主的に開拓する研究意欲の旺盛な大学院生を待っています。
大学院生の声
プロフェッショナルを生かした学際的研究を目指す
原田信子 さん(後期課程3 年生 )
行動発達論コースでは「人間行動」について自分の専門領域を追究するだけにとどまらず,他の分野の学問も学ぶことで新たな発想や手法を身につけることができます。私は理学療法士として医療現場で働いていましたが,現在は加齢に伴う認知機能の低下が高齢者の立位姿勢調整能に変化を与えるメカニズムについて研究を行っています。世界が超高齢社会に向かう中で,高齢者を取り巻く環境や行動はますます多様化しています。このため高齢者を対象とした研究では,自分の専門領域の知識や概念を体系的に整理することに加え,演習や研究発表など討論の場で,社会学や運動生理学など他の分野からの新しい理論や研究手法を知ることが非常に役立っています。大学院では国際学会の発表や欧米誌への投稿も積極的に指導していただいています。また,地域高齢者を対象としたフィールドワークも行っており,社会のニーズを認識し,そのニーズに応えることのできる研究へと発展させたいと考えています。
スタッフとカリキュラム
スタッフと研究分野・研究テーマ
氏名 | 職名 | 担当 | 研究分野・研究テーマ |
---|---|---|---|
岡田 修一 (おかだ しゅういち) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【加齢の身体運動科学】 高齢者の立位バランス能力の多角的な分析・評価,及びその知見に基づいた転倒予防法の開発と効果判定に関する研究を行っています。 |
小田 利勝 (おだ としかつ) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【社会学,ジェロントロジー (老年学),地域研究】 少子高齢・人口減少社会における生涯発達論的観点からのサクセスフル・エイジングの研究とサクセスフル・エイジングを支える諸制度・諸組織の研究を行います。 |
近藤 徳彦 (こんどう なりひこ) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【応用生理学,運動生理学,環境生理学】 運動,年齢,性差,日内変動,運動トレーニング,人種差などからヒトの体温調節機能のしくみを統合的な観点から研究し,この機能の魅力にせまります。 |
長ヶ原 誠 (ちょうがはら まこと) | 准教授 | 前期課程 後期課程 | 【スポーツプロモーション,健康行動科学,ジェロントロジー】 成人・中高齢者を対象とした健康増進やスポーツプロモーションに関する理論・実証的研究と共に,アクションリサーチを通じた事業評価研究を行っています。 |
増本 康平 (ますもと こうへい) | 准教授 | 前期課程 - | 【高齢者心理学,実験心理学,認知心理学】 豊かな高齢社会を実現するための環境・技術の構築を目指し,加齢による認知機能・行動要因の変化について実験心理学的手法を用いた研究を実施しています。 |
主な授業科目と概要
【博士課程前期課程】 行動発達論コース
科目名 | 科目概要 |
---|---|
ジェロントロジー特論I | ジェロントロジーの課題と方法を取り上げ,少子・高齢化問題や高齢期の心身の変化に関わる問題を科学的に分析・検証できる能力の養成を目指す。 |
ジェロントロジー特論演習 | ジェロントロジーに関わる国内外の多様な研究成果と最新の研究動向を検討しながら,資料やデータの収集と分析の方法および分析結果の発表に関する技術を身につける。 |
スポーツジェロントロジー特論I | 加齢を成熟へのプロセスと捉えるジェロントロジーをベースに,成人・中高齢者を対象としたスポーツプロモーションと文化振興のあり方について考察する。 |
スポーツジェロントロジー特論演習 | スポーツによる個人と社会の成熟化をテーマとする振興事業と文化プロデュースの方法論について,実際のプロジェクト関与とアクションリサーチの観点から学習する。 |
身体機能加齢特論I | 加齢に伴う身体機能の変化を引き起こすメカニズムやその機能変化に対する身体運動の影響について,身体運動科学の観点から考究する。 |
身体機能加齢特論演習 | 身体機能の加齢変化に関する研究資料を基に,加齢に伴う機能変化を引き起こすメカニズムに関しての高い新規性および独創性を有する研究について討論する。 |
身体機能調節特論I | ヒトの生理学的調節機構をいろいろな調節機構との関連や多くの影響要因から統合的な観点でみることで,身体機能調節を検討する。 |
身体機能調節特論演習 | ヒトの生理学的調節機構を統合的にみることにより,からだの問題(例えば,健康問題)をどのように解決できるのか文献から検討する。 |
行動適応特論I | 加齢にともなう認知機能の低下,その結果生じる日常生活の問題,問題に対する対処について最新の研究を概観し,今後の研究課題や実践課題を考察する。 |
ヒューマンコミュニティ創成研究 | ヒューマンな環境形成の条件や前提,問題群等への理解を深め,博士課程前期課程での個別の専門領域での学習・研究のための基本的な視点を養う。 |
【博士課程後期課程】 行動発達論分野
科目名 | 科目概要 |
---|---|
*ジェロントロジー特論II | 最新の研究動向を検討するとともに,少子高齢・人口減少社会の課題解決に向けたジェロントロジー研究の一翼を担うことができる実務者や研究者の養成を目指す。 |
*スポーツジェロントロジー特論II | ヘルスプロモーションやプロジェクトマネジメントの学問領域における振興理論に準拠し,加齢と共に拡がるスポーツ文化振興の可能性と課題について,学術的議論と新たな仮説構築を目指す。 |
*身体機能加齢特論II | 老化期の人間の行動に関わる課題について明らかにするとともに,新規性および独創性の高い方法論に依拠した実証的研究の可能性について論考する。 |
*身体機能調節特論II | 体温調節機能の入力と出力の関係を複合的な対応関係から,また,この機能と呼吸・循環調節機能との相互関係から検討し,身体機能の調節特性を考察する。 |
*教育能力養成演習 | 大学教員としての教育能力・教育資質の開発を目指し,指導教員の指導監督のもとで,専門領域の基礎的内容を取り扱う学部の講義科目の「模擬授業」を実施する。 |
修了と進路
修士論文テーマ
行動発達論コースの修士論文テーマをご覧ください。
主な進路
行動発達論コース 修了生の進路 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期課程人間行動専攻)をご覧ください。
専修免許の取得状況
行動発達論コース 資格免許の取得状況をご覧ください。
Updated: 2012/01/10 (Tue) 10:58