講演『「大学のセンセイ」の現在とFD』
以下、FDは「Faculty Development」の略です。
開催について
ポスター (1.1MB)
講演の様子
- 日時
- 2007年12月21日 (金) 14:00~15:00
- 会場
- 神戸大学発達科学部 F256教室 (F棟2階)
- 対象
- 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教職員、院生
- 参加方法
- 当日、直接、会場へお越しください。
- 参加費
- 無料
- 主催
- 大学院GPプロジェクト「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」委員会活動支援グループ
- 連絡先
- 大学院GPプロジェクト「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」 (2007~2009年度)事務局
電話: 078-803-7969 (内線: 7969)、メール: gph_info@ml.h.【続けて「kobe-u.ac.jp」を入力してください】 - 備考
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本イベントは、大学院GPプロジェクト「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」 (2007~2009年度)委員会活動支援グループの事業になります。
- 担当院生
- 稲葉 慎太郎 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間行動専攻博士課程前期課程)、出口 明子 (神戸大学大学院総合人間科学研究科 人間形成科学専攻博士課程後期課程)、則定 百合子 (神戸大学大学院総合人間科学研究科 人間形成科学専攻博士課程後期課程)、萩原 久美子 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科 心身発達専攻博士課程前期課程)
プログラム
タイトル | 「大学のセンセイ」の現在とFD |
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講師 |
神藤 貴昭 (徳島大学 大学開放実践センター・高等教育支援研究開発部門 准教授)
神藤 貴昭 氏 |
概要 | 大学教員になると何が待ち受けているのか。授業運営、時間がない中の研究、学内の委員、その他多様な仕事、人間関係。さらには初任者研修、リーダー研修などのFD (Faculty Development) が2008年度から「義務化」されます。要請される仕事の中身は時代と共に変容しているけれど、大学教授職は魅力ある職業です。本講演では、「大学のセンセイ」という職業の現在についてお話しし、FDの現状と課題について考えたいと思います。なお院生のみなさんには大学教員を目指したい、と思ってもらえるような講演にしたいと考えています。 |
報告・事後コメント
講師より
講演の様子
講演会・懇談会では多数の教員・大学院生の皆様に来ていただきまして、厚くお礼申し上げます。学部・修士のときに学んだ教室でお話させていただき大変うれしく思います。
大学の役割を考えた場合、知の創造と知の伝達があると思います。創造された知があってこそ知が伝達されるのは当然ですが、逆に知の伝達があってこそ、知の創造もあります。後者のプロセスを担保するのが教育活動であり、FDなのだと思います。したいがいましてFDというのは、技術先行、研究の邪魔というイメージがあるかもしれませんが、実は大学の本質に触れるものであると考えます。
大学院生の皆さんは、今いる研究重視の大学院から、そうではない教育重視の大学や短期大学に職を得ることが多いと思います。学生さんたちに自分が専攻している学問の一端をわかりやすく、興味を持たせる形で話し、学生の反応をみることによって、<自分が行っている研究の社会的な位置づけ>を知ることになります。言い換えると深く狭い世界からいったん出ることができるのです。たとえば、心理学分野で「記憶の方略」の研究をしている人が、自分の研究内容を学生に示すために授業計画を立てているときに、「冷静に考えるともっと効果的な記憶方法があるな」「方略を用いる際には社会的文脈が重要だな」と自分の研究を少し引いた視点で見ることができるようになるかもしれません。あるいは、学生の反応からヒントを得ることもあります。また、教員が少ない大学では、自分の専攻分野とかけはなれた科目を教えなければならない場合がありますが、他分野を勉強することによって、別の視点から自分の研究を見直すことができます。大学とは何かを考えた場合、これらのこと、つまり教育と研究の関係まで視野に入れたFDをしなければ、今日お会いした、研究にまい進しておられる院生のみなさんに申し訳ないな、と思いました。
私のいる徳島大学も含めていろいろな大学でFDプログラムが展開されています。講演会や合宿形式の研修、授業コンサルテーションなどさまざまですが、形式的には「トップダウン」で始められるとはいえ、最終的にめざすところは、大学教員間の自発的な相互研修コミュニティの形成です。FDセンターやFD委員会はそれを側面からサポートするにすぎないような時代になることを望みたいと思います。
神藤 貴昭 (徳島大学 大学開放実践センター・高等教育支援研究開発部門 准教授)
参加院生より (1)
高等教育の改革という言葉はよく耳にしますが、実際にどのような取組があるのかとか、FDとは何かということについて、この講演会に参加させていただいて初めて知ることができました。これまでは学生という立場からでしか、「先生」や「学校」というものを知りませんでした。学生が見ていない部分でどのような活動が行われているか、より良い学びの場であるためにどういった工夫がされているか、またこれから何が必要になるのかについて、少し理解ができた気がします。
FDをすすめる上で重要なことは、協力・共同といった対人関係だと感じました。これから大学に務めたいと考える人は、専門性だけでなく、コミュニケーション能力などの対人関係スキルを学生の間にしっかりつけておかなければいけないのだということを強く感じました。
萩原 久美子 (人間発達環境学研究科 心身発達専攻 健康発達論講座 M1)
参加院生より (2)
司会進行の様子
今回のFD支援事業では、徳島大学大学開放実践センターの神藤貴昭先生をお招きし、「『大学のセンセイ』の現在とFD」というタイトルでご講演をいただきました。2008年度から義務化されるFDの内容について、また、神藤先生が実際に展開されてきたFDプログラムの実践事例について、具体例を交えながらお話しいただきました。約50名の教職員、及び大学院生の参加がありました。特にこれから大学教員を目指す大学院生にとっては、大学初任者研修の実践例のお話は非常に興味深い内容であったと感じています。
この事業の実施にあたっては、約1ヶ月半前から専攻の異なる他の大学院生3名と協働して、ML上での議論を中心に、どのような内容の講演会にするのかといった企画検討をはじめとして、様々な準備に取り組んできました。また講演会当日も、司会進行や記録などの運営を協力して行いました。このような講演会の企画・運営という形で他の大学院生と協働してFD支援事業に携わることができた今回の取り組みは、従来の正課内の活動では経験できなかったことであったと思います。この経験を今後の大学院生活、また将来大学教員になった際に、実践的に生かしていきたいと思います。
出口 明子 (総合人間科学研究科 人間形成科学専攻 D2)
参加院生より (3)
今回の講演に携わり、具体的なFDの内容について触れることができました。なぜFDの義務化が必要となったかという背景として、大学における大学教員の“研究する”、“教える”、“運営する”という異なる3つの立場を明確にし、それぞれについて質の向上と説明責任を果たす必要性が求められている現状を知ることができました。
こうした取り組みが整備されることで、大学教員初任者の効率的な教員業務への順応はもちろんのこと、大学という一つの組織が自主性をもって更なる成長を遂げていく契機になるのではないかと思います。
今回、この企画にて学んだ内容を自らのキャリアと照らし合わせながら、今後の進路に生かしていきたいと思います。
稲葉 慎太郎 (人間発達環境学研究科 人間行動専攻 M1)
参加院生より (4)
去る12月21日に行われた神藤貴昭先生のご講演に、大学院メンバーの1人として参加させていただきました。講演会には、大学院生をはじめ、教職員の方々も多く参加されており、この事業に対する意識や関心の高さを感じさせられました。
講演会では、来年度から義務化されるFD事業について、現在実際に行われている大学初任者研修の実践例やFD基礎プログラムなど多岐に渡る取り組みを紹介していただき、これまで具体的なイメージの湧かなかった大学側からの視点を得ることができました。また、時代と共に大学の在り方も変化しており、我々が今まさにその移り変わりの時期にいるのだということも実感しました。大学の存在を、学生の立場からだけでなく、教員の立場から捉えることができたのは、今回の取り組みで得た大きな収穫だったと考えています。
則定 百合子 (総合人間科学研究科 人間形成科学専攻 D3)
Updated: 2008/09/09 (Tue) 11:28