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講演会「日本列島における人間と自然のかかわり」

趣旨

日本列島は縄文時代より人口密度が高く、自然は人間の徹底的な関与を受けてきた。それにも関わらず多くの固有植物種や大型哺乳類を有するなど豊かな自然が保たれている。日本人が自然といかに関わってきたかを明らかにすることは、自然の賢明な利用考える上で重要な指針をもたらすと考えられる。また一方で、このような視点は日本列島の歴史、とりわけ日本人の形成を考える上でも重要である。日本人はヒトとしての普遍的存在であると同時に、固有の自然との関わりの中で形作られてきた存在でもあるからだ。縄文時代から現在に至るまで、日本人はいかに自然を改変し、自身も変わってきたのだろうか。

講師として、日本列島における人間と自然の相互作用を歴史的・文化的に検討する研究プロジェクトのリーダーを務めておられる湯本貴和先生をお招きし、研究の意義や成果を紹介して頂きます。“講演会”となっていますが、カフェ形式で気軽な雰囲気で行いたいと思います (お茶と菓子が出ます)。数多くの参加をお待ちしております。

開催について

日時
2008年3月6日 (木) 13:30~16:30
会場
神戸大学発達科学部 B208教室 (B棟2階)
対象
神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科の学生および教員
参加方法
当日、直接、会場へお越しください。
参加費
無料
主催
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻 自然環境論コース
備考
本イベントは、大学院GPプロジェクト「正課外活動の充実による大学院教育の実質化」 (2007~2009年度)における自然環境論コースの「コース企画」になります。

プログラム

タイトル 日本列島における人間と自然のかかわり
講師 湯本 貴和 (総合地球環境学研究所 教授)

概要

南北に細長い日本列島は、現在、亜寒帯、冷温帯、暖温帯、亜熱帯の気候帯を含んでいる。過去10万年の地球規模の環境変動下でも、これらの気候帯が南北に推移しながら全体を覆っていたことが明らかになっている。この気候帯の違いによって、日本列島のなかでも自然のあり方や人間の基本的生業も異なり、自然と人間活動との相互関係も大きく異なっている。しかし、個々の生物は、気候変動と人間活動のなかで、日本列島とその周辺域をそれぞれの個体群の分断と拡大・縮小を繰り返しながら、適切な生息域を求めて移動し、それがない場合には絶滅してきた。

一方、人々が個々の生物について培った知識と技術には、生物資源を持続的に利用するという思想と資源枯渇をおそれずに収奪しようとする思想が、ともに含まれていると考えられる。民俗学的には、コモンズ管理や収穫制限による資源保全の考え方が指摘されるが、いつの時代からどの範囲の地域でどのような人々によって実践されてきたのか、あるいはどのような社会的条件で資源保全の考え方が優勢になるのかといった位置づけは、あいまいなままである。歴史を通じて、全般に温暖で豊かな降水量にも恵まれている日本列島ではあるが、過去の生物資源の過利用や枯渇の歴史はどのようであったのだろうか。

わたしたちは、総合地球環境学研究所の6年間計画のプロジェクトとして上記の課題に取り組んで3年目になる。北海道、東北、中部、近畿、九州、奄美・沖縄の6つの地域を調査地として、花粉を含む生物遺体、考古遺物、古文書、民俗資料などを用いて、それぞれの地域での人間-自然相互関係の歴史的変遷を明らかにするとともに、人間の社会経済的な背景や自然・生物を扱う知識と技術の変遷を探り、とくに人間の生業に大きく関わる、針葉樹とブナ科樹木、大型陸生哺乳類 (クマ、オオカミ、カモシカ、シカ、イノシシ、サル) に焦点を当てて、それらの個体群の消長との関係を明らかにすることをテーマとしている。現在までの進行状況とこれまでに明らかになった事実や概念的な構築について、お話ししたい。

Updated: 2009/06/16 (Tue) 15:10