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岩井正浩ゼミの活動


岩井 正浩 (人間発達環境学研究科 教授)

2009年3月31日、愛媛大学で12年、神戸大学で27年の総計39年間の教員生活にピリオドをつけ、63歳定年を迎えました。1982年に大学院設置に合わせて神戸大学に移籍しましたが、その移籍を決断させたのは、神戸が私の出身である土佐・坂本龍馬の神戸海軍塾 (1864年5月。神戸海軍操練所) であったこと、学生時代に山岳部で活動していた頃、あこがれていた岳人・加藤文太郎 (新田次郎『孤高の人』のモデル) の思い出の地であったことにあります。

神戸大学ではすばらしいゼミ生に恵まれました。なかでも教育学部時代の自主ゼミで香川県の「滝宮念仏踊」、高知県四万十川流域の「暮らしと音楽」調査を10数年間にわたって実施し、学会発表や論文や報告書を共同研究として作成したこと、17回におよぶ岩井ゼミ「地球音楽レクチャーコンサート」を開催したこと、その集大成として2回の岩井ゼミに拠る『音の万華鏡』コンサートを開催できたこと、そして六甲山をはじめとする場所でゼミ合宿を行ったことです。

「音の万華鏡」のタイトルが示すように、私の研究は人間と音楽の根源的な関わりをテーマとしています。その対象は西洋音楽はもとより、日本音楽・諸民族の音楽など人間の音楽・身体表現活動全般に及んでいます。そして人間がなぜ音・音楽を表現しようとするのか、またせざるを得ない状況に置かれるのかといった命題をフィールドワークや音楽や身体表現を通して明らかにしてきました。その対象は日本および諸民族の子どものわらべうた (遊びうた) から民謡・民俗芸能そして祭り、さらにはハンガリーなど諸民族音楽の調査・採譜・分析を通して独自の作曲技法を確立したバルトークなどの作曲家研究です。岩井正浩ゼミの活動はまさにその主軸を成すものでした。

大学院総合人間科学研究科博士後期課程設置のために、学科同僚2名とともに既を一にして取得した学位は、ゼミ活動をさらに発展させる原動力にもなりました。7名の博士学位授与と単位取得満期退学者、23名の教育学研究科修士、24名の総合人間科学研究科修士、そして多数の卒業論文を作成した学部生を輩出できたことはこの上もない喜びです。

私のゼミ活動は幅広い分野における自由闊達な雰囲気に基づいていました。数十回におよぶフィールドワーク、『ゼミ通信』はOB・OG達の貴重な財産となっています。教育・研究が開かれたゼミ活動に立脚してはじめて成り立つものであることは論を俟ちません。そしてその活動が神戸大学で行われたことをゼミOB・OG達とともに誇りに感じています。

土佐人は自由で開放的、その裏返しとしてかどうかわからないが脇が甘い、足元をすくわれやすいとも言われています。しかし土佐生まれの私はそれでもよいのではないかと自認しているし、今後もその気概を持ち続けていくだろうと思っています。自由闊達に行われたゼミ活動は、土佐人としての「私」に拠るところが大かもしれません。

Updated: 2009/05/29 (Fri) 14:10