神戸大学大学院人間発達環境学研究科 心身発達専攻 【博士課程前期課程】 臨床心理学コース/【博士課程後期課程】 心理発達論分野
心理臨床の専門職に求められる実践力と研究能力を身につける
臨床心理士養成を目的とするコースで,心理臨床の専門職に求められる実践力と研究能力をともに高めることを目指しています。臨床心理士受験資格取得の第Ⅰ種指定大学院コースです。資格認定協会指定カリキュラムに対応した授業科目と発達支援インスティテュート 心理教育相談室や外部実習施設での実習を通して,心理や発達上の問題を抱える子どもや成人への心理臨床面接や心理検査・発達検査,コミュニティ支援について専門的力量を養成します。学生は人間発達論講座心理発達基礎論コースとの連携による研究指導,ならびに同コース院生との交流を通じて,心理教育に関わる問題についてより広い視野から,臨床実践の専門的力量と研究能力を高めることができます。コース修了者は各県のスクールカウンセラー,病院の心理士,家庭裁判所調査官,鑑別所技官,少年院の法務教官,企業の産業カウンセラー,自治体の心理職(心理判定員,心理指導員),児童養護施設心理職員,学生相談室カウンセラーなど多方面で活躍しています。
大学院生の声
新しい道へ向かって:夢だった臨床心理士への歩み
岸本美鶴 さん(前期課程2 年生 )
私は他大学の英文科を卒業し,数年間公立高校で勤務した後このコースに入学しました。もともと人のこころや対人関係に興味を持っていましたが,高校教員として働く中で再びこの分野を勉強する必要性を感じるようになり,臨床心理士を目指すことにしました。その中で神戸大学の臨床心理学コースを選んだ理由は,人間発達環境学研究科のもとにあり,教育や青年期に関する研究をすることができると考えたからです。人間発達環境学研究科には心理教育相談室があり,学生一人一人がケースを持つことができ,本格的なカウンセリングの実習経験を積むことができます。また,ケースカンファレンスも充実しており,丁寧な指導や助言をしてもらうことができます。コースは全体的に温かく親切な雰囲気があり,先輩や先生方もフレンドリーです。このような恵まれた環境を活かし,私も一つでも多くの知識と経験を積みながら,学び続けたいと思います。
スタッフとカリキュラム
スタッフと研究分野・研究テーマ
氏名 | 職名 | 担当 | 研究分野・研究テーマ |
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相澤 直樹 (あいざわ なおき) | 准教授 | 前期課程 - | 【臨床心理学,臨床心理検査(投影法)】 青年期における自己愛的傾向と対人恐怖的傾向に関する調査研究を行っています。ロールシャッハ検査法を中心とする心理検査法 (投影法) について実践的に研究しています。 |
伊藤 俊樹 (いとう としき) | 准教授 | 前期課程 後期課程 | 【臨床心理学】 芸術療法や心理療法におけるクライエントのイメージの変化,および,ロールシャッハテストを用いた芸術家の創造性について研究を行っています。 |
河﨑 佳子 (かわさき よしこ) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【臨床心理学,発達臨床心理学】 聴覚障害児の心理発達と家族支援について研究してきました。近年は,被虐待児童への心理的ケアについて乳児院・児童養護施設を舞台に取り組んでいます。 |
森岡 正芳 (もりおか まさよし) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【臨床心理学,文化心理学,カウンセリング】 ナラティヴアプローチによる治療的意味生成に関する研究。対話関係の中で自己が積極的に構成されるプロセスを質的研究の方法を用いて分析しています。 |
吉田 圭吾 (よしだ けいご) | 准教授 | 前期課程 後期課程 | 【臨床心理学】 幼小中高大を中心とした教育現場における教育相談の理論と実際,保護者面接の在り方,発達障害や精神障害を抱える人へのアプローチ方法について研究しています |
主な授業科目と概要
【博士課程前期課程】 臨床心理学コース
科目名 | 科目概要 |
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心理療法特論I | 心理療法の基本的な視点や態度を学び,心理臨床の意義や心の問題の専門家としての臨床心理士の専門性について考える。とくに心理臨床のケース理解について検討を深めたい。 |
臨床人間関係学特論I | 臨床心理学の理論と実際,精神障害・発達障害の理解とその症状別の心理療法,司法,病院,福祉,教育などの現場別の臨床心理学の実際などについて,幅広く解説する。 |
臨床心理学特論I | 心理療法の理論と技法への統合的視点の探求。技法的には多様な展開を見せている心理療法に共通する要因とは何か。その可能性と限界について検討する。 |
芸術療法特論I | 芸術療法の理論を学ぶだけでなく,実際に作品を作って,その作品を媒介にしてロールプレイを行うことによって,芸術療法を実際に体験する。 |
臨床心理検査特論 | ウェックスラー式知能検査,K式発達検査を中心とする知能検査法,発達検査法,ならびに,MMPI を中心とする人格検査法に関する基礎知識,実施法と解釈の導入について学ぶ。 |
臨床心理実習I | 現場からの精神科をテーマとし,精神科臨床のリアルな現状に触れてもらい,臨床と概念の両方に触れる。代表的疾患について,症例提示やビデオ供覧を行い,丹念にフィードバックと質疑を行っていく。 |
精神医学特論 | 臨床心理士に求められる心理臨床実践能力や職業的責任能力を養い,また事例発表を通して事例理解や心理臨床の事例研究能力を養う。 |
教育臨床特論 | 今,教育臨床に何か起きているのか,心理臨床家に何が求められているのかの理解を深めると共に関わり方について学び合う。具体的には,ひきこもり事例やいじめ・暴力の問題を通して教育臨床について考えていく。 |
イメージ臨床特論 | 臨床心理学ではイメージの使用が根幹にかかわる。ロールシャッハテストや描画療法,箱庭療法において大切になるイメージについて,理論と実際を独創的に解説する。 |
ヒューマンコミュニティ創成研究 | ヒューマンな環境形成の条件や前提,問題群等への理解を深め,博士課程前期課程での個別の専門領域での学習・研究のための基本的な視点を養う。 |
【博士課程後期課程】 心理発達論分野
科目名 | 科目概要 |
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*人間発達特論II | L. S. Vygotsky の「高次心理機能の文化- 歴史的発達理論」の諸概念や方法論についてさらに検討を深めていく。とくに内言の意味論と想像の発達論との関係を探究する。 |
*人格形成特論II | 人格形成に関わるテーマから一つを選び,最近の関係論文を収集・講読し,最近の動向と今後の方向性を明らかにしていく。 |
*自己形成特論II | 近年のアイデンティティ形成や自己形成に関する理論的・実証的研究を取り上げ,アイデンティティ形成をはじめとする自己形成の問題について論じる。 |
*教育発達心理学特論II | 実際の実践や学術論文を素材に,教育支援・学習支援の実践研究における支援の具体的内容と効果検証の方法を,研究者の視点から検討する。 |
*教育能力養成演習 | 大学教員としての教育能力・教育資質の開発を目指し,指導教員の指導監督のもとで,専門領域の基礎的内容を取り扱う学部の講義科目の「模擬授業」を実施する。 |
*臨床人間関係学特論II | 臨床人間関係学に関わるテーマについて,具体事例をもとに議論し,理解を深める。同時に,人間科学の質的研究法や事例研究法の根拠を明確にしていく作業を共同で行う。 |
*臨床心理学特論II | 臨床心理学の視点で,参加者の研究テーマを照らして見えてくる研究課題を詳しく検討し,教育学・心理学・社会学・民族学・音楽論・法学・福祉学・医学・哲学・言語学・芸術論などを学際的に融合させて考察する。 |
*芸術療法特論II | 芸術療法に関する英語の文献を講読し,芸術療法の理論と実践を深く学ぶ。又,自分が実践している芸術療法のケースについて発表する。 |
*臨床心理実習II | 臨床心理事例研究。保健医療,学校カウンセリングや家族関係・発達支援の場面での事例を中心に検討を行う。事例発表のプレゼンテーションについてのスキルも習得する。 |
*教育能力養成演習 | 大学教員としての教育能力・教育資質の開発を目指し,指導教員の指導監督のもとで,専門領域の基礎的内容を取り扱う学部の講義科目の「模擬授業」を実施する。 |
修了と進路
修士論文テーマ
臨床心理学コースの修士論文テーマをご覧ください。
主な進路
臨床心理学コース 修了生の進路 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期課程心身発達専攻)をご覧ください。
専修免許の取得状況
臨床心理学コース 資格免許の取得状況をご覧ください。
Updated: 2012/01/10 (Tue) 11:22