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神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻 【博士課程前期課程】 自然環境論コース/【博士課程後期課程】 自然環境論分野

自然科学の広い視野を備えて環境の本質をとらえ,課題解決に挑む

20世紀に科学は大きな発展を遂げましたが,同時に専門化,細分化が進みました。一方,気候変動,生物多様性保全,資源・エネルギー問題など,環境問題を始めとした科学に関わる現代社会の諸課題は複合的な性格を持ち,持続可能な社会の構築に向けてそれらの解決に取組むには,旧来の学問の諸分野・領域を超えた総合的な知の在り方や,異なる背景や専門性を持つ人々の連携をコーディネートできるような能力・人材が必要となっています。このような背景を踏まえて,博士課程前期課程の自然環境論コースおよび後期課程の自然環境論分野では,自然環境の成り立ちや,環境と人間の相互作用に関する基礎的研究を行う能力を有し,自然科学的立場から人間環境の具体的諸課題の解決を目指す人材を養成します。そのために,自然環境に関わる物質系,生命系,地球表層から宇宙にいたるまでの幅広く,基礎的な理解を深めるとともに,環境汚染,生物多様性を含む自然環境保全などの人間生活と密接に関係する環境問題に関して深く考究します。カリキュラムには,専門諸領域の多彩な授業科目に加えて,環境科学の大学院レベルの幅広い基礎力を修得する環境基礎物質科学,環境基礎生命科学等の科目群,先端的トピックスを取り上げる自然環境先端科学の科目群の他,サイエンスコミュニケーション演習,インターンシップなどの特徴ある科目が用意されています。これらを基盤として,特別研究や論文作成を通じて研究能力を養います。多様な領域の教員や大学院生の仲間との対話と相互作用の中で,高い専門性と総合力を培い,自然環境の諸課題に挑む意欲ある皆さんを歓迎します。

大学院生の声

多様な学問分野を追求するユニークな学び舎

写真
尾崎圭太 さん(前期課程2 年生 )

私たちの研究科の最も良い点は,多様な学問分野の研究者がいることだと思います。このことに最初は,統一感が無いとか,広く浅い知識の修得しか出来ないのではと考えていました。しかし,その考えは誤りでした。先生はその道のプロばかりで,研究室では深い専門性を修得出来ます。さらに,ここは周りに目をやると全く別の専門性が広がっています。そこに興味が湧いたときに,すっと入り込める環境がこの研究科にはあり,「寄り道」で得た知恵を自分の研究へ還元することが出来ます。こんな研究環境はここしかないと思います。 私は天文学分野の一つである,ガンマ線天文学について研究をしています。X 線よりも高いエネルギーであるガンマ線を観測することで,超新星残骸など宇宙の極限状態にある星の詳細を知る事が出来ます。私たちの研究分野の競争相手はNASA であり,日々世界の動向を意識しながら研究を進めています。

過去版

スタッフとカリキュラム

スタッフと研究分野・研究テーマ

氏名職名担当研究分野・研究テーマ
青木 茂樹
(あおき しげき)
教授前期課程
後期課程
【素粒子・宇宙線物理学】
ニュートリノ振動実験や宇宙ガンマ線の観測などの研究をしています。
伊藤 真之
(いとう まさゆき)
教授前期課程
後期課程
【宇宙物理学,科学教育】
人工衛星等によって得られるデータを用いた宇宙の観測的研究や地域社会における市民科学活動支援システムの構築に関する研究をしています。
上地 眞一
(うえじ しんいち)

[2012年3月末で退職予定]
教授前期課程
後期課程
【生物有機化学】
酵素機能の一つであるエナンチオ選択性の発現機構の解明及び酵素表面を磁性粒子やクラウンエーテルなどを用いて化学修飾することによる酵素の機能改変を試みています。
丑丸 敦史
(うしまる あつし)
准教授前期課程
後期課程
【植物生態学】
送粉者による花形質の進化の解明を目指し,及び送粉ネットワーク構造や水田生態系における希少種 (半自然草地の草本,カエル類) の分布特性の解析も行っています。
榎本 平
(えのもと たいら)
教授前期課程
後期課程
【分子生物学】
高増殖性・高重油生産性を有する重油生産藻類Botryococcusbrauniiの開発に関する研究や遺伝子クローニング技術の開発を行っています。
江原 靖人
(えばら やすひと)
准教授前期課程
後期課程
【生物有機化学】
遺伝子を構成している核酸塩基を改変した人工核酸を合成し,試験官内高速進化法と組み合わせることにより,がん細胞,ウイルスを標的にした新しい核酸医薬を創製しています。
蛯名 邦禎
(えびな くによし)
教授前期課程
後期課程
【環境物理学,理論生命科学】
地球システムと生命システムの時間発展ダイナミクスのモデル化と,それに基づく地球環境理解に取り組んでいます。
大串 健一
(おおくし けんいち)
准教授前期課程
後期課程
【地球環境】
地球環境変動のメカニズム解明に向けた古環境研究を行っています。
齊藤 惠逸
(さいとう けいいつ)
教授前期課程
後期課程
【分析化学】
化学発光・蛍光を利用した物質の分析法,有機試薬を用いたイオン選択性電極の開発,ストレスマーカー測定法の開発に取り組んでいます。
高見 泰興
(たかみ やすおき)
准教授前期課程
後期課程
【進化生態学】
生物多様性と進化に関わる性淘汰と種分化のメカニズムについて,野外調査,行動実験,形態解析,DNA解析などを組み合わせて研究しています。
武田 義明
(たけだ よしあき)
教授前期課程
後期課程
【植生学,植物生態学】
生物多様性は,人間の影響による低下だけでなく,逆に放置されても低下する場合があります。植物群落を対象に,生物多様性の保全を目的とした研究を行っています。
寺門 靖高
(てらかど やすたか)
教授前期課程
後期課程
【環境地球化学】
河川水,生物が作る鉱物,地殻を構成する岩石・鉱物などの様々な地球表層物質についての元素濃度や同位体組成を用いた地球環境の地球化学的研究を行っています。
中川 和道
(なかがわ かずみち)
教授前期課程
後期課程
【放射光物性物理学,環境物理学】
大気環境科学 (太陽を光源とした温暖化ガスの検出など) やシンクロトロン放射を用いた生体分子の分光研究 (アミノ酸やDNA分子など) について研究しています。

主な授業科目と概要

【博士課程前期課程】 自然環境論コース

科目名科目概要
自然環境先端科学A地球大気中の化学物質の濃度や分布,それらの時間変化を支配するメカニズム,地球規模の物質循環に関わるプロセスなどについて基礎レベルから講述する。
自然環境先端科学B地球環境問題の解決に向けた学際的・総合的な学問創出の一環として総合地球環境学研究所等で進められている文理融合型の研究事例を紹介・解説する。
自然環境先端科学C新しい生活環境を含む環境化学の体系化を行い,リスク評価に必要なバイオチップやマイクロ流体チップなどの先端計測化学の基礎と応用を解説する。
環境科学特別講義A各教員や訪問研究者が環境科学に関する時宜を得た最新の話題についてそれぞれの視点から解説する。
サイエンスコミュニケーション演習非専門家や他分野の研究者などとのコミュニケーションを中心に,科学に関わるコミュニケーション・スキルを高めるための演習を行う。
インターンシップIA環境科学に関わる研究機関や,企業,自治体,NPO などで,2週間程度の実習を行い,研究や社会の現場で必要となる資質を高めることを目指す。
インターンシップIB環境科学に関わる研究機関や,企業,自治体,NPO などで,3週間程度の実習を行い,研究や社会の現場で必要となる資質を高めることを目指す。
インターンシップIC環境科学に関わる研究機関や,企業,自治体,NPO などで,1ヶ月程度の実習を行い,研究や社会の現場で必要となる資質を高めることを目指す。
環境基礎物質科学A宇宙の進化の中で原子がどのように作られてきたのかについて,星(太陽)に対する理解を深めながら学ぶ。
環境基礎物質科学B大気科学を題材として,物質のマクロな特性や動態を扱う,物質輸送,連続体力学,熱力学など,環境科学の大学院レベルの基礎を学ぶ。
環境基礎物質科学C環境科学を学ぶために必要な物質科学の基礎を理解するための講義と演習を行う。具体的には,物理化学のうち,熱力学,統計力学,化学反応論などを扱う。
環境基礎生命科学A生命現象のミクロレベルの理解の基礎として,主として分子生物学の実験的研究成果とバイオインフォマティクスなどの理論的側面について講述する。
環境基礎生命科学B生命現象をマクロレベルで理解するための重要な概念である生物多様性(景観,群集,種の多様性)について,ミクロレベルとの関連も踏まえて講述する。
環境植生学特論I植物群落は,様々な環境に対応して成立しており,その要因としては気候や地形・地質などの自然環境や人為的な影響であることを理解する。
植物多様性特論I植物生態学・生物多様性学の基礎を学び,植物多様性を説明する様々な生態学的理論を説明する。人間活動による多様性低下の具体的事例も取り上げる。
高次生命機能特論I地球上の生命系を取り巻く様々な環境因子が生体の高次機能等に与える影響を蛋白質や核酸の関与する分子レベルの相互作用機序に基づき講述する。
環境創成科学特論I自らの専門研究が環境科学の文脈においてどのような意義を持つのかについて考え,学際的視野の育成と研究アピールのためのプレゼンテーション能力の向上を目指す。
環境地球化学特論I環境地球化学に関する基礎となる文献や最先端の論文を講読し議論などを交えて専門性を深める。
環境地質学特論I地層に記録された地球環境変動の情報を環境地質学的手法により解読した事例を解説する。
宇宙環境物理学特論I星間空間を含む広義の宇宙環境の諸現象の物理について,各年度選択した領域(放射輸送,宇宙流体力学など)を学ぶ。
粒子物理学特論I現代の素粒子モデルが確立されて来るまでの過程について学ぶ。
紫外線・放射線作用特論I生体分子や有機材料等に紫外線や放射線を照射することによって誘起される効果をシンクロトロン放射を用いた放射光物性論の観点から講義する。
自然階層構造特論複雑な地球システムや生体システムを考える基礎として,力学的・確率的時間変化,自己組織化,環境適応などを通じた自然階層の形成を講述する。
分析化学特論I環境汚染物質の分析を題材として取り上げ,試料中の微量成分を分析する際の前処理および検出法について,その背景にある理論を含めて解説する。
環境有機化学特論I酵素としてリパーゼやエステラーゼを主として取り上げ,酵素反応を利用する農薬や医薬などの有用物質のエナンチオ選択的変換について解説する。
超分子化学特論水素結合,静電相互作用,疎水性相互作用を組み合わせ,生体内で巧妙に働いている分子システムを模倣するための手法につい て講述する。
ヒューマンコミュニティ創成研究ヒューマンな環境形成の条件や前提,問題群等への理解を深め,博士課程前期課程での個別の専門領域での学習・研究のための基本的な視点を養う。

【博士課程後期課程】 自然環境論分野

科目名科目概要
*環境植生学特論II植物社会学的方法による群落分類体系の詳細およびその成立要因について講義する。
*植物多様性特論II植物多様性減少の実体,多様性保全と人間生活の両立の困難さと共存のための工夫などを学び,植物多様性・生態系保全の今後について講述する。
*環境地球化学特論II環境地球化学に関する基礎となる文献や最先端の論文を講読し議論などを交えて専門性を深める。
*環境地質学特論II地質学的手法に基づく最新の環境分析法を紹介し,それらの手法により明らかとなった地圏環境の現在および過去の変遷について議論する。
*水環境科学特論水循環,水質,水管理など水環境研究に重要なグローバルおよび地域的な課題について,人間活動による変化という視点も交え,最新の研究成果を講述する。
*環境有機化学特論II酵素反応の速度論的解析及びESR やFT-IR などのスペクトル測定の基づいた酵素の構造(動的挙動)変化の解析手法について解説する。
*環境遺伝子工学特論重油生産藻類,高効率光合成藻類のゲノム構造とエネルギー生産性を,遺伝子,酵素タンパク質の機能レベルで講義する。
*分析化学特論II微量成分の分析に有効な手段である化学発光法や蛍光法による有害物質の簡便で高感度な分析法を開発するための戦略や可能性について討論する。
*高次生命機能特論II生体内の遺伝的因子と化学物質等の環境因子との分子レベルの相互作用をモデル化・解析し,各種環境影響のリスク評価などを行う系統的手法を修得する。
*生体超分子化学特論ナノメータースケールで制御された界面や生体分子構造体などを,有機化学及び遺伝子工学を組み合わせて構築する手法について講述する。
*環境創成科学特論II生物の環境適応の生態学的,進化学的側面について,自らの専門研究成果について考え,討論を通じてその科学的意義を深く理解することを目指す。
*理論環境物理学特論気候と物質循環,生態系の空間構造と時間発展,生体の非線形応答,地球圏自然環境動態などを扱う理論的な手法を,ミクロとマクロの立場から講述する。
*紫外線・放射線作用特論II生体分子,有機物等に紫外線・放射線を照射すると誘起される励起・イオン化・発光・反応等の諸効果を放射光物性論の観点から専門的に講義する。
*粒子物理学特論II粒子と物質の相互作用の基礎過程について学び,素粒子実験や宇宙線観測で使用する検出器に関する理解を深める。
*宇宙環境物理学特論II太陽系内から星間空間に至る広義の宇宙環境の諸現象につき,人工衛星等による観測を中心に宇宙科学の話題を取り上げ,その研究手法について学ぶ。
*教育能力養成演習大学教員としての教育能力・教育資質の開発を目指し,指導教員の指導監督のもとで,専門領域の基礎的内容を取り扱う学部の講義科目の「模擬授業」を実施する。

修了と進路

修士論文テーマ

自然環境論コースの修士論文テーマをご覧ください。

主な進路

自然環境論コース 修了生の進路 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期課程人間環境科学専攻)をご覧ください。

専修免許の取得状況

自然環境論コース 資格免許の取得状況をご覧ください。

コースサイト

Updated: 2011/06/24 (Fri) 16:29