神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間表現専攻 【博士課程前期課程】 表現文化論コース/【博士課程後期課程】 表現文化論分野
人間の表現と文化のかかわりを解き明かす
私たちは小さい頃から自分らしくあれと言われ続けてきました。表現についても同様です。個性的であること,オリジナルであることが賞揚されてきました。しかし,ほんとうでしょうか? いったい個性やオリジナルとは何でしょうか。そもそも,そうした言説はどのようにして成立したのでしょうか。表現文化論研究は,まず,表現を疑うところから始まります。表現に限りない関心をもつからこそ,疑うのです。
表現文化論コースは,表現を,人間が意識するとしないとに関わらず生み出してきた文化として捉え,歴史的・社会的に探求します。人間ひとりひとりの想像力は,残念ながら身の丈を超えることはできません。しかし,そうした人間が集まった社会では,想像を絶することが起こり得ます。そして,その社会がまた次の時代の個性に影響を与えます。これまで素直に好きでいられた表現の世界にちょっとした疑念が生じたとき,そのときこそが,さらなる探求への出発点です。文献調査や,実験,フィールドワークに実際の表現活動といった様々な研究へのアプローチの中で,表現文化の過去・現在・未来に対する深い認識と柔軟で創造的な構想力を養い,さらに,その認識や構想を他者に向かって分かりやすく説得的に伝えることのできる論理的な表現力を涵養します。官公庁や民間企業・組織の専門職,研究者,学芸員,アートマネージャー,ステージマネージャー,編集者,ジャーナリスト,ライターなど,これからの成熟社会において表現文化の諸領域で活躍が期待される人材を養成します。
大学院生の声
知らないところで,知らない世界に触れる喜びを感じる
汪鋭 さん(前期課程2 年生)
私は中国の大学で主に日本語を学び,もっと日本を身近に理解しようと思い,留学しました。表現文化論コースには,中国の近現代における視覚・物質文化に関する研究を指導していただくにふさわしい先生がいらっしゃるので,ぜひここで留学生活を送りたいと思いました。いま私は,表現文化論コースのデザイン史の研究室に所属し,中国の画報『良友』(1926-45 年)の広告に見られる女たちについて研究をしています。ここでの指導を通じて,自主的に勉強に取り組むことの大切さを知りましたし,修士論文において自分が何をやるべきかがはっきりとわかってきたところです。新しい研究上の観点に立ち,これまでよく知らなかったところ(日本)で,知らない世界(自分の国の歴史や文化)に触れる喜びを,いま強く感じています。
スタッフとカリキュラム
スタッフと研究分野・研究テーマ
氏名 | 職名 | 担当 | 研究分野・研究テーマ |
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梅宮 弘光 (うめみや ひろみつ) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【近代建築史】 近代建築の歴史・都市環境形成史が専門です。前者では建築におけるモダニズム思想の生成と変容,後者ではとくに戦後神戸の都市環境形成史を研究の柱としています。 |
大田 美佐子 (おおた みさこ) | 准教授 | 前期課程 後期課程 | 【西洋音楽史,音楽美学】 両大戦間の音楽文化の諸相 (音楽・音楽劇に表象された芸術思潮や時代精神,伝統の継承やその展開 (受容) の問題) について研究しています。 |
小髙 直樹 (おだか なおき) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【感性科学,図形科学】 芸術などの創造的表現における,あいまいで,主観的,多義的,状況依存的な感性情報を抽出し,工学的に取り扱うことができる論理情報に置換する方法を模索しています。 |
田畑 暁生 (たばた あけお) | 准教授 | 前期課程 後期課程 | 【社会情報学,映像論】 情報社会に関する理論的・実践的な諸問題を扱います。具体的には,情報社会論の思想的系譜や,映像の内容分析,地域情報化政策の影響などを扱います。 |
中山 修一 (なかやま しゅういち) | 教授 | 前期課程 後期課程 | 【デザイン史】 19世紀から現代に至る英国のデザインに関する研究。とりわけ現在は,陶芸家富本憲吉のウィリアム・モリスの受容過程について研究を進めています。 |
平芳 裕子 (ひらよし ひろこ) | 准教授 | 前期課程 - | 【ファッション文化論,表象文化論】 西洋近現代における「ファッションと女性」との関わりを,雑誌や絵画などのメディアを中心とするイメージ・言説の分析を通して考察しています。 |
主な授業科目と概要
【博士課程前期課程】 表現文化論コース
科目名 | 科目概要 |
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芸術総合特論 | 人間表現研究の基礎として,さまざまな芸術ジャンルにおける研究を横断的に扱い,芸術研究の総合的な視座を求めることを目的とする。 |
デザイン史特論I | デザイン史研究における基本的枠組みとその発展史について主として論じ,あわせて最近の視覚文化研究や物質文化研究の成立事情に関しても言及する。 |
デザイン史特論演習 | デザイン史研究のリサーチ・スキル(修論レベル)の修得を目的とした演習を行う。具体的には,受講生一人ひとりがテーマを設定し,小論文を作成する。 |
図形科学特論I | 言語とともに重要な情報伝達手段の一つである図形に注目し,その基本的な構造・性質と表現方法,また人間の認知メカニズムとの関連について考察する。 |
図形科学特論演習 | 図形科学特論Ⅰの内容を踏まえ,図や形によって構成された情報伝達手段としてのデザインのイメージや表象,評価等の問題について演習を行う。 |
建築文化史特論I | 近代におけるモダニズム建築思想や都市環境形成の背景をなしている近代社会を,建築や都市との関連から,文献研究とフィールド調査を通して検討する。 |
音楽史特論演習 | 西洋,または日本の近現代における音楽文化のトピックを選び,外国語の文献を精読する。後半は各人が関連したテーマを設定し,その発表を相互に論評しあい,問題意識を共有する。 |
ファッション文化特論 | ファッション研究の方法論的問題を検討したうえで,ファッションをめぐるイメージや言葉を通じて,視覚文化の諸問題を考察する。 |
ファッション文化特論演習 | ファッション研究に関する基本的文献の講読をふまえ,受講生各自が設定されたテーマのもとに研究発表を行い,全員で討議を行う。 |
ヒューマンコミュニティ創成研究 | ヒューマンな環境形成の条件や前提,問題群等への理解を深め,博士課程前期課程での個別の専門領域での学習・研究のための基本的な視点を養う。 |
【博士課程後期課程】 表現文化論分野
科目名 | 科目概要 |
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*デザイン史特論II | デザイン史研究の最前線の動向を知るうえで必要とされる,国内外の最近の重要な研究成果や主要な論点を取り上げて紹介し,詳しく解説する。 |
*図形科学特論II | 言語とともに人間の重要な情報伝達手段の一つである図形が有する情報の二つの性質,すなわち形式的な論理情報と状況的な感性情報について論考する。 |
*建築文化史特論II | 日本の建築におけるモダニズム建築思想の展開過程について,その背景をなす社会状況や芸術諸分野との関連に着目しながら検討する。 |
*メディア情報社会特論II | メディア情報社会特論Ⅰおよび演習を踏まえて,博士課程に籍を置く院生が,自らの研究を発表し,お互いに切磋琢磨し批評し合う場所として機能させる。 |
*教育能力養成演習 | 大学教員としての教育能力・教育資質の開発を目指し,指導教員の指導監督のもとで,専門領域の基礎的内容を取り扱う学部の講義科目の「模擬授業」を実施する。 |
修了と進路
修士論文テーマ
表現文化論コースの修士論文テーマをご覧ください。
主な進路
表現文化論コース 修了生の進路 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期課程人間表現専攻)をご覧ください。
専修免許の取得状況
表現文化論コース 資格免許の取得状況をご覧ください。
Updated: 2011/09/05 (Mon) 14:03