高校と共に授業を作る ~県立明石清水高校「科学と人間」コース~: 報告4
藤木 篤 (人文学研究科 文化構造専攻 哲学コース)
活動内容
1. 講義: 「事例から学ぶ工学倫理の考え方」
- 日時
- 2008年11月27日
- 目的
- 過去に起きた事故から得られた教訓をもとに、科学技術と社会の関わりについて理解を深めることを目指す。
- 内容
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- イントロダクション (参考資料: 齊藤了文・坂下浩司 編『はじめての工学倫理』)
- 「六本木ヒルズ回転ドア事故」の発生から事後の対応までの経緯について学習 (参考資料: 畑村洋太郎『ドアプロジェクトに学ぶ』)
- 班分けの上、ディスカッション。その後、各テーブルごとに意見をまとめてもらい、互いに発表しあう
2. ゼミ: 「続・事例から学ぶ工学倫理の考え方」
- 日時
- 2009年月1月15日、1月22日、2月5日 (発表会)
- 内容
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前回の講義に引き続き、過去に発生した事例を通して、工学倫理の考え方を学んだ。今回は、工学倫理上では最も有名な事例「スペースシャトルチャレンジャー号墜落事件」 (1986年、アメリカ) をとりあげた。
- 1月15日: 予備学習。「スペースシャトルチャレンジャー号事件とはどんな事件なのか」
- 1月22日: ディスカッション。テーマは、「スペースシャトルチャレンジャー号墜落事件から得られる教訓とは? また、それは私達の日常生活にどのような示唆を与えるのだろうか?」
- 2月5日: これまでの講義・ゼミの内容をまとめ、「過去の事例に学ぶことで、科学技術と人間との関係に関して何が言えるか」を発表してもらった
感想
私は普段、「工学倫理」という専門分野で研究を進めています。詳しくは述べませんが、研究と同時に (あるいはそれ以上に) 教育が重視されるような学問領域です。ですから、「科学と人間」コースで授業協力をしてみないか、とのお誘いはまさしく渡りに船、という感じでした。
実際の授業も、なにごとにおいてもまずは我々院生の自主性に任せて下さったので、本当に思うがまま、のびのびとやらせて頂きました。授業は、事例をベースに討論するという工学倫理教育における最もオーソドックスなスタイルを採りました。実験的・野心的な試みはほとんど取り入れませんでしたが、授業後のアンケートを読む限り、もう少し興味を持たせられるような試みがあってもよかったかな、と思います。
「科学と人間」コースを受講する生徒の中には、将来工学系を目指す未来のエンジニアたちが多くいる、と聞きました。彼らに工学倫理の考え方を紹介できたことを、大変光栄に思います。しかし科学技術に関する問題へは、彼らを中心にして、わたしたち全員が関わっていかねばなりません。そういった意味で、将来エンジニアを目指す人もそうでない人も、同じ場所で対等に意見を交換しあえたことは、良い経験になったのではないでしょうか (この点に関してはアンケートでも概ね好意的な意見を頂いていました)。
生徒からの忌憚のない意見は、新鮮であると同時に、参考になる箇所が多く含まれていたように思います。ほとんどが励みになった一方で、反対に反省を促されるものも少なくはありませんでした。そうした点も含め、今回の取り組みで多くのことを学んだのは、生徒の側ではなく、私の方だったような気がします。
Updated: 2009/04/22 (Wed) 10:30