地学をベースにした環境問題や環境教育への取り組み
大串 健一
(所属: 人間環境学専攻 環境基礎論講座、研究分野: 環境地質学)
著者近影
私の専門分野は環境地質学と呼ばれる地学の一分野です。近年、地球温暖化や土壌汚染、地下水汚染、土石流災害など様々な地学に関連する環境問題が世界的な関心事の一つになっています。環境地質学と呼ばれる分野はそれらの問題解決につながる研究を地質学的な手法に基づいて行っている分野です。その中で私が主に取り組んでいるのは、海底堆積物や化石などから古環境記録を復元する研究です。2007年にノーベル平和賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」の2007年の報告書でも古気候データや古海洋環境情報が重要視されているように将来の気候変動予測のためにはより長い時間スケールで地球環境の変化を見ていく必要があります。特に雪氷圏の広がっている北半球高緯度は気候変動を増幅する場として注目されています。気候変動の影響が増幅され、地球温暖化の影響が現在最も見られるのが北極海です。北極海において2007年の夏には観測史上最小の海氷面積を記録したように北極圏では過去30年間で急激に温暖化しています。しかし海氷面積が縮小する原因など温暖化のメカニズムはよくわかっていない部分が多く、更なる研究が必要とされています。私は北極海の環境変動を明らかにするため、2009年9月~10月 (40日間) にかけて海洋地球研究船「みらい」の北極海研究航海に参加しました。本航海では海氷が著しく縮小していたため北緯76°という高緯度で日本船として最北の海域で海底堆積物試料を得ることに成功しました。今後は得られた貴重な試料を解析して地球環境情報を世界に発信していきたいと思います。
次に上記以外の環境教育に関連する活動を紹介します。2008年からは国際地学オリンピックの兵庫地区一次選抜試験のコーディネーターを担当し、2008年と2009年の12月に神戸大学にて一次予選を実施しました。昨年は灘高の学生が国際大会で銀メダルをとるなど、地学分野での兵庫県の学生の活躍が目立ちました。2009年度からは日本地球掘削科学コンソーシアム (J-DESC) に正会員として加入しました。J-DESCは日本政府が建造した地球深部探査船「地球」などを利用した統合国際深海掘削計画などの国際プロジェクトを支援する組織です。J-DESCの活動を通じてマントル掘削や気候変動、地震予知などの国際的大型研究や人材育成活動を支援しています。2008年にはひょうご講座で講師を務めました。2008年度からは日本地質学会近畿支部の幹事、2009年からは日本第四紀学会の学会誌編集委員として学会活動にも貢献しています。
Updated: 2010/07/23 (Fri) 13:12