第62回高分子若手研究会 [関西] の開催
江原 靖人
(所属: 人間環境学専攻 環境基礎論講座、研究分野: 生物有機化学)
著者による開会あいさつ
平成16年7月に「コンビナトリアル高分子科学の潮流」と題し、神戸市立神戸セミナーハウスで1泊2日で第62回高分子若手研究会 [関西] を開催した。この研究会は高分子学会の補助のもと、若手学生の教育を目的に毎年行われているもので、この年に研究会の幹事をさせて頂いた。
当時、生体物質であるDNA、ペプチド、タンパク質をはじめ、合成高分子に至る化合物に、分子認識能、触媒能などの思いのままの機能を付与することが可能になりつつあった。しかしその手法は、骨格とする化合物、目的とする機能によって実に様々であった。そこでこの研究会では、当時独自の方法で高分子化合物に機能を付与する研究で活躍している研究者に講演をして頂き、関西地区の各大学の学生に、この分野に対する関心をもってもらうことを目的とした。
神戸大学工学部 近藤昭彦教授には「細胞表層ディスプレイ法によるコンビナトリアルバイオエンジニアリング」、関西大学工学部 大矢裕一教授には「DNAを用いた新規構造体の設計」、神戸大学工学部 竹内俊文教授には「モレキュラーインプリンティング:分子鋳型の合成戦略」、大阪府立大学先端研 藤井郁雄教授には「テーラーメイド人工酵素の創出」、甲南大学理工学部 杉本直己教授には「機能性核酸の創製」、慶應大学 松原輝彦助手には「ファージ提示法を用いた生理活性ペプチドのセレクション」の題目で講演をして頂いた。インフルエンザ・SARSによる感染、狂牛病、ヒトゲノム解析、環境ホルモン、エネルギー問題など、科学としてだけでなく社会問題としても重要な現象をつきつめていくと、最後は数ナノメーター (1ナノメーター=10-9m) の分子サイズの微少領域での現象に行き着く場合が多い。この研究会では教員、学生と共に、その重要性に対する認識を共有できたと感じた。
大学教員、一般企業研究者、学生合わせて87名が参加した。神戸大学からも発達科学部・工学部から22人の学生が参加し、教員や他研究室の学生らと夜通し活発な討論を行ったようである。第一線の研究者と学生がじっくりと意見をぶつけ合える機会はなかなか無いものであるので、今後も企画を検討したい。
Updated: 2010/07/23 (Fri) 13:42