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社会貢献としてのダンス ~BEYOND THE BORDER PROJECT~


関 典子

(所属: 人間表現専攻 人間表現論講座、研究分野: 舞踊学)

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私の専門とする「コンテンポラリーダンス」は、文字どおり「同時代のダンス」として、現代社会の様々な問題に取り組むことが期待されています。18世紀の西洋で舞台芸術としてのダンスが確立して以来、ダンスは長らく劇場という限定された空間の中で、特別な訓練を積んだ表現者と観客のためのものとして発展を遂げました。しかし、ダンスは元来、踊ることも観ることも含め、人々の生活の中で機能する最も原初的な表現だったはずです。現在、ダンスの持つこの本来的な力が注目され、コミュニケーションのためのメディアとして、福祉・教育・医療など、劇場の外へ、社会の様々な場へと広がり始めているのです。

こうした傾向のもと、2009年度は、本学付属の子育て支援施設「のびやかスペースあーち」や「水都大阪2009」での「らくがきダンス ~バルーンを作ろう!~」ワークショップの実施 (絵画ゼミと共同)、「神戸ビエンナーレ2009/兵庫県立美術館と神戸大学大学院人間発達環境学研究科の相互協力協定締結記念事業」として、美術館の屋外大階段を会場とした14名の学生による群舞パフォーマンス『Site Specific Dance Performance GATE』の総合監修・演出などを行ってきました。これらの活動は、幅広い層の方々にダンスを身近に感じていただく機会となる大変意義深いものでありながら、もっとマクロな視点での社会貢献活動ができないものかと、悶々とする思いがあったことも確かです。

そんな折、楽曲・動画ダウンロードによる「国境なき医師団」への寄付活動「BEYOND THE BORDER PROJECT」に参加する機会を得ました。「音楽が国を越えて伝わるように、この曲が国を越えた寄付となる」という趣旨のもと、プロジェクトを盛り上げるべくボランティア参加したアーティストは音楽・写真・墨絵・イラストレーションなど様々。私は、ニューヨークと東京を拠点に活躍中の写真家たかはしじゅんいち氏の撮影のもと、「BEYOND THE BORDER feat. RYOSUKE IMAI for Tiny Voice, Production」のプロモーションビデオにソロ出演しました。私自身の表現活動が寄付に繋がるという待望の機会に、二つ返事で参加を決めたものの、創作に際してはまた新たな苦悩が沸き起こってきました。

「国境なき医師団」のCMをご覧になった方もおられるかと思いますが、原曲のプロモーションビデオには、各地の紛争や食糧・医療不足に苦しむ子どもたち、それをケアする医師団の壮絶な姿が映されています。この過酷な現状をアートとして表現することは到底不可能であり、同時に、むしろメッセージやドキュメントではなく、アーティストとして私たちのできる最善の作品を生み出すことこそ、動画のダウンロード購入=寄付にも繋がるはずだという信念のもと、スタッフ一同、真剣勝負で制作に打ち込みました。

2010年もハイチやチリでの大地震などが立て続けに起こり、今この瞬間にも、多くの人々が支援を必要としています。この現実から目を背けることなく自身の活動を続けていくこと、そして、社会貢献活動が広く普及することを念じつつ、「BEYOND THE BORDER PROJECT」のホームページを紹介することで、本稿を閉じることといたします。

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BEYOND THE BORDER PROJECT

Updated: 2010/07/23 (Fri) 13:34