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常に社会に役に立つ研究を


石川 哲也

(所属: 心身発達専攻 人間発達論講座、研究分野: 健康政策)

「研究は常に社会に役に立つものを」が私の研究姿勢です。

私の専門は、「健康政策学」です。その中でも、児童生徒の健康の保持増進 (一次予防) に焦点を当て、学校環境衛生及び健康教育 (喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育、性教育) について研究しています。

1. 学校環境衛生

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研究領域の一つは、ダニの研究です。ダニは、喘息をはじめとするアレルギーの原因とされています。喘息を起こすダニは、ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニです。またこれらのダニは人の皮膚などを餌にしているため、ヒトの住んでいる所に生息しています。喘息などのアレルギー症状の発症を抑えるためには、ヒトの住んでいる環境のダニの濃度を低く抑えることが大切です。そのためには、環境におけるダニのアレルゲン濃度を知り、濃度の高いところのアレルゲンを取り除く必要があります。これらの測定には、ダニを採取し、匹数を数えるか、酵素免疫測定法がありますが、手間がかかったり、高価な機器を必要とするなど、一般的には測定が不可能でした。私の研究室では、簡易測定法として開発された「マイティーチェッカー」が、学校環境で利用できることを確認し、学校環境を測定したところ、保健室の寝具やカーペット敷きの教室などから多くのダニアレルゲンを検出しました。児童生徒は、一日の3分の1を学校で過ごすため、学校においてもダニの衛生的な管理が、必要であることが分かりました。これらの成果が認められ、2004年には、文部科学省の「学校環境衛生の基準」に採用され、学校においては、毎学年定期にダニを測定し管理をすることになりました。もう一つの研究は、児童生徒が学校に持参する、水筒の細菌汚染に関する研究です。今日、学校に水筒を持参する児童生徒が多く見受けられます。学校の飲料水は、毎授業日に遊離残留塩素の有無などを検査するなど衛生的に管理されていますが、水筒の衛生状態は分かっていませんでした。そこで、兵庫県の小学校や中学校において調査したところ、一万個を超えるような一般細菌や大腸菌群に汚染されている水筒が半数以上あることが分かりました。これらの研究成果は、2006年5月に共同通信から配信され、神戸新聞をはじめとする、全国の地方紙に掲載されました。また、2008年の日本経済新聞にも取り上げられ、水筒持参の在り方に警鐘を鳴らしました。(ただし、掲載の記事のタイトルは正確ではありませんが)

2. 性教育

学校における性教育は、児童生徒の人格の完成豊かな人間性を育成するために行われます。また、性に対する価値観や態度は、人間に生き方に深くかかわっています。さらに性行動の低年齢化などは大きな社会問題化しています。このため、学校における性教育は、教科を含めた様々な機会に行われています。私たちの研究室では、性教育の在り方、進め方に関する研究を行うとともに諸外国の性教育を研究しています。このような研究は、ありそうであまりありません。このため、文部科学省や都道府県教育委員会など様々な研修会で、講師として講演しています。また、財団法人日本性教育協会の理事として性教育の推進に協力しています。

3. 薬物乱用防止教育

大学生や高校生の大麻の乱用が社会問題となっています。また、覚せい剤の乱用など毎日のようにマスコミで報道されています。このため、薬物乱用防止教育充実が求められています。私たちの研究室では、薬物乱用防止教育に資するため、薬物乱用率の高い欧米の薬物乱用防止教育の研究を行っています。これらの成果が認められ、2006年10月には、台湾行政院衛生省管制薬品管理局に招待され、講演を行ってきました。また、2007年6月には2007 National Drug Control Conference and International Drug Control Symposium (台湾) に招待され、講演をしてきました。文部科学省が作成した、指導資料などにも長年委員長として作成に協力してきました。また、「健康行動教育科学研究会」を創立し、毎年「アルコール健康教育研修会」および「薬物乱用防止教育研修会」を主催し指導者の養成を行っています。今年は、前記研修会は第19回、後記講習会は第18回となりました。受講者も4000人を超えました。これらに関連して、財団法人日本アンチ・ドーピング機構の評議員、薬理部会員として協力しています。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:06