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校区審議会委員


三上 和夫

(教育・学習専攻、人間形成論講座)

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地図を背にして審議会を司会しています

関西圏の中都市の教育委員会の委嘱で、校区審議会の委員長を仰せつかっています。校区にかかわる課題を審議決定し答申するのが課題です。私には、『学区制度と学校選択』 (大月書店) という著書もあり、校区設定の専門家と見られたのかもしれません。ただ、子どもたちも仕事をするようになって、家族の課題として学校について考えることが減った時点での依頼だったので、戸惑ったことは確かです。任期は三年で、現在二度目の任期中です。委員会は、学校関係者、PTA代表、コミュニティ代表、学識経験者の四分野から、各3名で、計12名で構成されています。

公立の小学校・中学校では、市町村や区などの自治体内の地域を区画して通学すべき学校を指定することが一般的ですが、近年はこの校区の線引きに様々な工夫をすることで、多様な通学を認める動向が生まれています。委員会では、各年度ごとに校区に係わる課題を審議決定しています。関西では、私立学校への就学が定着していて、お子さんの成長のどの段階で私立受験をするかも、校区変更に連なる制度変化の要因になっています。

審議会の仕事をして、親子を最小単位として複数の世代が関心をもちあう地域社会の話題として、居住と就学の関係があるのだと感じています。学齢期のお子さんを育てている期間は限られています。そして、伝来の居住地や新規開発地等の混在や、集合住宅・戸建てなど団地造成の規模や様態は多様です。さらにそれらが複合しながら、地域の状態は年々刻々変化しており、集落の歴史は様々に集積されているという実感があります。

教育委員会の教育行政の責務は、住民の納得と支持に支えられて、地域における教育への不満と混乱を解消してゆくところにあります。教育委員会が、校区審議会を作って運用の方途を公開して審議してゆくことも一つの問題発見と解決の方策です。私の任期で一つ実を結んだのは、希望学校通学を一定比率で認める制度です。校区の線引きとは異なる学校への通学を認めることで柔軟な通学区域と学校施設との結合をつくり出そうということです。通学は子供たちの日々の社会空間移動のかたちです。それは、大人社会のつくり出した子供の生活の仕方への「きまり」の体系なのです。制度運用の柔軟性を可能にすることは、大人世代からの子ども世代へのプレゼントなのだ、と私は考えています。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:12