シティズンシップ (市民性) 教育についての国際交流活動
今谷 順重
(人間形成学科、教育・学習論講座)
最近、イギリスやEU (ヨーロッパ連合) をはじめアメリカやカナダやオーストラリアそして我が国においても、急激に変化する今日の社会の中で、自己と他者や社会との建設的な関係を築き、自分にあった職について、豊かな暮らしを実現しながら、よりよい社会づくりに主体的に参画していくことのできる、自立した市民・生活者としてのシティズンシップ (市民性) を形成していくための教育を、積極的に推進していこうとする動きが盛んになってきています。
ここには、戦後の高度経済成長を経て高い豊かな経済水準を実現した我が国をはじめ欧米先進諸国では、市民自身が自分の生活する地域や社会の中で生じている課題を見つけ出し、そのよりよい解決のための意思決定過程に主体的に参加・貢献することによって、自ら住みよい豊かな社会を実現していこうとする、民主的で成熟した市民参画型社会と、小さな政府による活力ある福祉国家が形成される状況になりつつあるという捉え方があります。
しかし、このような成熟社会の条件が整ってきている一方で、その社会の担い手となるべき青少年の責任ある自立的な市民・社会人としての資質を育てることが、ますます困難になってきているという、もうひとつの現実があります。豊かさの中で、人々が多様で個性的な価値観を尊重するようになり、学齢期から成人期へと移行していく社会的自立のための共通モデルが失われるとともに、知識基盤型社会の進展によって、青少年に求められる社会的・職業的資質の性格や内容も大きく変化してきているからです。したがって、このような子どもたち及び青少年の社会的・職業的自立を促していくための教育に、学校が、家庭や地域や市民団体や企業などと連携してどのように取り組んでいけばよいかが、世界の教育改革の極めて重要な課題となってきております。
私は、「国際市民性教育推進ネットワーク」を立ち上げ、国内はもちろん世界の大学や研究者や学校との教育・実践交流に取り組んでいますが、本 (2007) 年度は、オーストラリアのシドニー大学、韓国の公州教育大学校、アメリカのワシントン大学とオハイオ州立大学を訪問して交流するとともに、サンディエゴで開かれた全米社会科協議会 (NCSS) の第87回研究大会に参加して、意見交換と情報収集を行いました。また、公州教育大学校とは学術交流協定を結ぶことができ、早速7月には、先方の学生6名が我が国を訪れて活発な研究交流を行うことができました。
Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:17