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子どもの足と靴 ―いまだ五里霧中ながら奮闘中


田中 洋一

(心身発達専攻、人間発達論講座)

写真
写真1

20年ほど前から、兵庫県全域の靴製造、販売の業者や整形外科医、学校の教師等が集まり、『子どもの足を考えた靴』作りを目指しているグループがある。一般に市販されている子ども靴がただの大人靴のミニスケールにすぎず、いかに「子どもの足」を考えて作られたものでないか、多分に憂慮している方々の集まりである。

私が研究者としてそのグループに参加させていただいてはや15年ほどがたつが、グループの一員として感心させられ、また自慢に思うのは、すでに会発起人の長老格の数名が亡くなったりリタイアして抜けているにも関わらず、当初の熱意は薄まらず逸脱せず、会員の方々の士気は益々旺盛なことである。ふた月に一度ほどのペースで、国内に止まらず外国の研究者や靴メーカー技術者を招聘した勉強会を開き、「子どものための理想の靴」作りに燃えている。その勉強や日頃の試行錯誤の成果は、学会への報告、他のグループとの交歓勉強会などに、逐一披露されていっている。

写真1は、半年に一度出している会報と掲載記事の一例である。表紙は、母親や幼稚園の先生などにも供するため、手描き (恥ずかしながら私が描いたもの) で質素に、特に凝ったデザイン等は出来るだけ避けることが旨とされ、掲載記事も専門以外の方がみられても充分理解可能な解説的記事を、なるべく載せている。

写真
写真2

掲載記事例の写真2は、0歳児 (黒ヌリの一番小さな足形) から3歳、5歳、10歳、20歳 (成人) までの足形を重ねたものである。同じ対象の成長記録でこそないが、それぞれがその年代の代表的な足形と会で認められた足形だが、この図からもお分かりのように、足は3歳までに急激に成長し、その後は指の長さの分くらいしか伸びない。すなわち、伸び盛りの0歳から2、3歳までの足は、とても柔らかく、それ故、外部の影響をもっとも受けやすい足なのである。ところが、これまでその成長期の足を考えた靴が無かったのだ。それどころか、子どもの足の成長データそのものが無かった、といってよい状態で、大人の足をそのままスケールダウンすれば、専門家ですら「OK!」であった。

靴が文化の象徴となって100年余。今やっと、大人と子どもの足は違うかな?という時期に至った。であるから、10年や20年程度活動した我々の道も、まだまだ五里霧中。これからの検討が、益々重要になってきている。しかしこの会も若い会員が増えてきており、熱意は途切れず見事に継承されていく予定なので、いずれ五里快晴となる日も、そう遠くないのではなかろうか。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:13