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学校保健の展開 ―兵庫県教育委員会での仕事―


中村 晴信

(心身発達専攻 人間発達論講座)

私は前の大学では医学部公衆衛生学教室に在籍し、公衆衛生医師としての活動を行ってきました。公衆衛生学は簡単にいうと集団を対象とした疾病予防と健康増進を扱う学問であり、その中の一領域として、学校保健という領域があります。これは、幼稚園から小学校、中学校、高校、大学の園児・児童・生徒・学生、および教職員の健康を守ることですが、その対象者はなんと日本の総人口の約五分の一にもなります。現在、学校においては受験に関わる教科が重視される傾向にあります。しかしながら、平均寿命が世界のトップクラスに達している我が国においては、健康寿命の延伸、即ち健康な生活をいつまで続けることができるかということが問題となっています。こういう時代にあっては、受験科目だけではなく、健康教育も学校現場で重視されるべきですが、残念ながら、まだそこまでには至っておりません。

さて「学校保健技師」とは聞きなれない言葉ですが、学校保健法第15条に、「都道府県の教育委員会の事務局に、学校保健技師を置くことができる」と定められている専門職です。その業務になぜ私が従事しているかというと、同法同条第2項において、「学校保健技師は、学校における保健管理に関する専門的事項について学識経験がある者でなければならない」と規定されており、資格的には医師、薬剤師が従事することが多いことから、医師であり、学校保健の研究も行っている私に白羽の矢がたちました。その仕事内容は同法同条第3項において、「学校における保健管理に関し、専門的技術的指導及び技術に従事する」ということになっています。

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実際には、兵庫県庁内にある兵庫県教育委員会内に私のオフィスがあり、週に1回、そこで仕事をします。教育委員会は主に指導主事と呼ばれる教員資格を持つ職員により業務が行われています。しかしながら、スタッフはとても少なく、一人あたりの業務量は膨大であり、また、時代を反映してか教育現場からのコンサルトが絶えず、その一方で、学校における健康政策をたてなければなりません。一方、私が務めている学校保健技師は、指導・助言、即ち主にコンサルタント業務です。時には、委員会にも出席し、専門職としてのコメントを述べる場合もあります。といっても、いつも出番があるわけでなく、感染症が流行する季節であるとか、困難性が伴う問題が発生したときには私の出番が多くなります。また、時には養護教諭の研修会で講演をしたりもします。このときは、どちらかというと、大学の研究者として、お話することも多いのですが、それを通じて養護教諭の教育に携わっております。

私は、大学で研究に携わり、県庁で実践に携わることにより、研究と実践との有機的なつながりができればと思っています。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:13