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FMわぃわぃでの憲法逐条解説


和田 進

(人間環境学専攻、環境形成論講座)

写真
FMわぃわぃ2Fロビー右手のスタジオ

わたしの専門分野は憲法学ということになるが、1980年代までは、国民主権論、国民代表思想、議会制度、選挙制度などをテーマとしていた。神戸大学教育学部に赴任した1978年頃から平和主義論をもテーマとするようになり、90年代以降は中心テーマとしている。それは、80年代に入って、日米安保体制の重要な展開が開始され、それに伴って国民の平和意識のありように大きな変容が見られたことを契機としている。そしてこの日米安保体制の変容は、米ソ冷戦体制の終焉後、90年代に入って、重大な質的転換を遂げ、このことを背景に憲法改正論議が巻き起こり、今、重大な局面を迎えるに至っている。現代の憲法改正論の基本背景に憲法第9条の改正問題があるが故に、平和主義研究は、憲法改正問題の検討をも課題とすることになった。こうした状況の展開を背景に、憲法改正問題、平和問題などを中心に、市民団体、労働組合、公民館などが開催する各種の講演会、学習会などの講師活動が私の社会貢献活動の中心を形成している。

ここでは、こうした活動の報告ではなく、昨年・2007年4月から行っているローカル放送局である「FMわぃわぃ」での活動を報告することとしたい。FMわぃわぃとは、95年の阪神・淡路大震災を契機に神戸市・長田区につくられたコミュニティFM局である。大きな被災を被った長田区には在日韓国・朝鮮人をはじめベトナム人、中国人、フィリピン人などアジアを中心とした28か国の外国籍の人びとが生活していた。この人々に震災情報を韓国語、ベトナム語などで流すミニFM局として立ち上がった二つの放送局が震災半年後の7月17日に「FMわぃわぃ」として一つになったものである。今では11言語の放送を展開している。そして現在は地域作りの観点から様々な創意ある放送を展開している。

私がそれまで全く知らなかったFMわぃわぃから電話をもらったのは07年の1月頃であった。憲法の条文103箇条を週に1条ずつ10分間の時間帯で解説してほしいという依頼であった。そのねらいは、憲法改正論議が起きているが、憲法の全文を学習する機会がほとんどない。憲法を理解した上で憲法改正を考えるべきだというものであった。私も憲法の内容を十分に理解しないでなされている論議が多いことに問題を感じていたこともあり、全条文をしゃべれるかとちょっと躊躇もしたが結局引き受けることになった。「耳で読み解く日本国憲法」というタイトルであった。

建前は、週に1条ずつ私が解説したものを毎日放送するのであるが、はじめてすぐにこれは大変な仕事だと気がついた。最初、1500字くらいの原稿を用意してしゃべるというものであったが、これでは短すぎて、3000字近くの原稿が必要になった。簡単に原稿を用意できる条文は少なく、改めて学習し直さなければならないものがほとんどである。また、目で見て読むものではなく、耳で聞いて分かるものにしなければならないので、文章に苦労する。はじめての経験なので1年近くなってもなかなかうまくいかない。教科書流のコンメンタールではなく、歴史的背景や現代の問題との関連に留意しているがなかなか難しい。第9条は3回に分けたが、2箇条を一度にやることもある。ほぼ1年たって、3月末で第66条までいった。まだ半年以上かかる。もちろん完全ボランティアであるが、スタッフの意気込みに押されて頑張るつもりである。FMわぃわぃのねらいが充分に満たされているとは思えないが。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:15