地域福祉活動に対する教育・研究支援活動
二宮 厚美
(人間環境学専攻、環境形成論講座)
福祉倶楽部塾
家族生活や地域社会の変容とともに、現代日本では、子どもから高齢者まで、新たな地域福祉活動に対する社会的ニーズが高まっている。それとともに、福祉を専門的に担う労働者の役割が重要になってきている。私が、主にかかわってきたのは、これらの専門的福祉労働者の教育と研究支援である。ここでは今世紀に入ってから続けてきた二つの活動を紹介しておくことにする。
一つは、学童保育指導員専門性研究会の会長としての活動である。この研究会は全国的組織で、07年時点で約600人の会員で構成されている。研究会の目的は、学童保育指導員の指導労働を研究し、交流し、指導員の日々の実践に貢献することである。学童保育の数は07年で約1万6700箇所、その利用児童数は74万人に達するが、それらを担う指導員は一学童保育につき平均約3.5人とされているから、およそ6万8000人近くの指導員が働いていることになる。だが、それらの指導員の身分や賃金・労働条件は確立しておらず、社会的資格による専門性の保障も十分ではない。また、学童保育の運営についても、明確なガイドラインがあるわけではない。
そのような事情から、研究会まず学童保育指導員の労働や役割は何なのか、保育士や学校教師の専門性との共通性や独自性等について、指導員自身が、実践を交流し研究するために出発することになった。研究会活動内容は、各地域で定例研究会を進めるほか、子どもの遊びや生活指導の専門的研究会を開催するほか、サーキュラー、機関誌『学童保育研究』を発行し、最近では、年一度の研究大会を催すまでになった (07年度で第3回)。指導員の実態調査や研修プログラムの成案化も進めている。将来は、この研究会を母胎にしつつ、学童保育学会の結成をめざす予定となっている。私は、研究会発足当初から会長の任にあたり、指導員の実践に学びつつ、研究会運営のまとめ役をを担ってきた。
いま一つは、関東を中心にした福祉倶楽部塾の塾長を務めてきたことである。この福祉倶楽部塾は、いまから8年前に、東京・渋谷に福祉活動の拠点をおく福井孝善・典子夫妻のイニシアティブのもとで発足したものである。塾は、年間約15回の講座と夏季合宿を中心行事として運営されている。塾の定員は、講座を進める福祉倶楽部のスペースの制約もあって、約25名、その大半は地域の福祉諸活動に従事する者、たとえばホームヘルパー、障害者作業所職員、看護師、保育士、ソーシャル・ワーカーたちである。
塾は、塾長としての私の講義のほか、社会保障・福祉の諸領域にかかわる専門家を招き、その講義を聞き、ゼミ風に討論する形で進められている。土曜日の午後から夕方まで、塾後の懇親・交流の時間を含めると、毎回、約6-7時間におよぶ学習・議論の場となる。塾生は老若男女さまざまな人から構成されているので、私自身も学ぶところの多い場となっている。
Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:16