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「生命の起原および進化学会」の啓蒙活動から


中川 和道

(人間環境学専攻、環境基礎論講座)

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写真 1. ミラーの実験の放電色を見る実験
赤紫は窒素の放電色を表す

学会の啓蒙活動を紹介する。中川が所属している「生命の起原および進化学会」では、研究組織に所属していなくても生命の起原、進化、宇宙での生命の存在などに興味関心をもつ方々の希望に応えようと2年前に「生命の起原および進化 友の会」 (以下「友の会」と略記) を発足させた。

2007年10月8日に「友の会」の第1回イベントを中川の担当で実施した。大阪市立科学館で実験つき講演会「ミラーの実験 (カミナリ放電によるアミノ酸の生成実験) は歴史に何を残したか?」を開催した。友の会会員とともに一般の方々にもご参加いただき、50名の参加者を得て、ミラーの実験への参加と、生命の起原および進化に関する科学の現状を知ってもらうことができた。

題材に取り上げたミラーの実験について説明が必要である。これは高校の生物学の教科書には必ず載っているもので、昔々の地球大気成分 (メタン、アンモニア、水蒸気) をフラスコに入れて3万ボルトくらいの高電圧でカミナリ放電を起こさせたらアミノ酸ができた、という1953年にアメリカの若き大学院生S.ミラー (当時23才) によってなされた有名な実験である。元来アミノ酸は生物だけが作り出すことができる典型的な生体分子と信じられていたのでミラーの実験は無生物から生物が起原する第1歩を再現する実証的な実験として、それ以来生命の起原に関心をもつ人々がかならず訪れる科学史上の聖地とも言える金字塔である。奇しくも5月20日にミラー先生ご逝去の訃報が伝えられ、企画は追悼の色を帯びることとなった。

大阪市立博物館の学芸員の方と中川でシビアな相談を重ねた結果、講演60分+実験90分を予定した。実験を参加者も参加するいわゆる参加型とした理由は、中川がすでに学部生の自由研究でミラーの実験を指導してきた実績をもつこと、講演だけでなく実験にも参加することによって生命の起原研究をじかに知ってもらい、あわよくば理科離れの解決への一助をと願ったことによる。科学館側と最大の問題が参加者の範囲であった。この実験では可燃性ガスのメタンに高電圧を印加するのでガス爆発の危険がある。パワーの強い高電圧放電による致死的な感電事故も避けねばならない。さらに毒ガスのシアン化水素が発生する。いろいろと事故防止策を講じ、小学4年生以上からご参加を、とすることで科学館側と合意に至ることができた。

中川の講演に引き続く実験は、参加者50名を3つのチームに分け、(1) ミラーの実験の放電を自分でやってみる (写真 1)、(2) ミラーの実験で得た液体試料と自分の汗の試料にニンヒドリン溶液を噴霧し、ともにアミノ酸が含まれている確認をする、(3) アミノ酸を分けるクロマトグラフィー実験の原理を体験する (写真 2)、とのテーマで実施した。指導者は学会側の大学の先生が担当した。

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写真 2. ミラーの実験で生成したアミノ酸の
種類を調べる実験風景

参加者の反応は予想以上に大きく、小学生からは「放電で分子が分解して原子になり、それが組み替えられてアミノ酸になるなら二酸化炭素もできていいはずだがどうか?」などの質問も飛び出し、講演した中川が討論を楽しませてもらう一幕もあった。ミラーの実験装置の前で記念撮影をする親子連れもあり、市民の高い関心に感動した。「友の会」HPも参照されたい (http://www.origin-life.gr.jp/tomonokai/event99/) 。

第1回のイベントがこのように成功をおさめたので、次回は2008年8月12日に西はりま天文台で行われる1年最大のイベントで中川が「宇宙にも生命はいるか?」という実験つき講演を行う予定となった。生命の起原、進化、宇宙での生命の存在などへの興味関心がひろく育ち科学へと向かうことを願っている。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:17