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ローカルな学会運営に携わる ―グローバルにそしてローカルに活動する―


澤 宗則

(人間環境科学科 環境形成論講座 地理学)

写真
神戸港を望む編集室より

大学の研究活動としてグローバルな研究動向に関わりながら世界的に評価される論文や学会発表を行うことが現在非常に重要視されている。例えば、大学の教員の評価項目として、世界的に権威のある学会誌にレフェリー付きの論文が何本あるのか、またそのような学会に招待講演されたことが何回あるのかなどである。さて、人文地理学の分野の一研究者として、グローバルな活動 (経済・政治・文化など) は、必ずローカルな活動と不可欠な関係にあると考えている。つまり、研究拠点や研究対象の地元や地域に深く根ざすことなしでは、グローバルな活動もいわば砂上の楼閣と化してしまうのである。草の根とグローバルを併せ持つことが重要なのである。そこで、この社会貢献レポートでは、大学の研究者のホームページでの業績にはなかなか表明されないローカルで草の根的な活動を紹介したい。

兵庫地理学協会という兵庫県内の大学・高校・中学の教員や大学院生を中心としたローカルな学会がある。会員数は100名弱 (毎年会費を納入している人はさらに少ない) で、学会としては小さな存在である。しかし、その歴史は長く、終戦後の1947年創立で、ほぼ毎年1号を着実に発行し、今年刊行した最新号は51号である。澤は、学会誌「兵庫地理」の編集責任者として2004年より現在まで学会運営に携わっている (それ以前は、会計や他の職務)。毎年1号の発行であるが、2004年より毎年テーマを決めた特集号を組み、テーマに即した論文を掲載することにしている。神戸のエスニシティ (2004)、兵庫のため池 (2005) であり、今年は、GIS@地理教育の特集号を予定している。ローカルな学会の使命は、地域に根ざすこと、会員のニーズを的確にくみ取ること、他の類似学会との差別化を図ること、将来への展望や方針を持つことであると、常々感じている。当学会の会員の過半数は高校・中学の地理の教員であり、地理学研究のグローバルな動向と、中・高での地理教育の橋渡しをすることが必要である。また、教材研究に必要な地元のテーマや、教育実践報告、GIS (地理情報システム) など、新しい技法などを特集号のテーマとし、会員のニーズに合わせるとともに将来への展望をもてるようにしている。

ローカルな学会活動は、その研究分野の裾野を広げ、また新たに興味を持つ若い学生の育成にとっても不可欠な活動である。これこそが、非常に地道で遠回りに見えるかも知れないが、グローバルな研究活動の高さをもたらす確実な方法であろう。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:18