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(社) 全国大学体育連合近畿支部会での「話題提供」


秋元 忍

(人間行動学科 人間行動論講座 体育・スポーツ史)

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著者近影

大学における私の仕事は、次の2点が主なものである。1) 専門とする「体育・スポーツ史」の研究・教育。2) 全学共通科目「健康・スポーツ科学実習」を通しての教養教育。今回の社会貢献レポートでは、2) にかかわる、ある活動について報告したい。

民主主義教育への貢献が期待され、戦後の大学に必修科目として位置づけられた体育実技は、いまや必修の枠こそはずれたものの、「健康・スポーツ科学実習」「身体運動実習」などとその名を変え、今日に至っている。非常勤のみの時代も含めると、私が大学、短大でこの実習科目を担当するようになってから、早いもので7年が経とうとしている。

この7年間は、試行錯誤の連続であった。歴史研究の一方で、実習担当能力向上のために時間を割くことは容易ではなかった。しかし、実習にかかわり続けることは、スポーツ愛好者の一人として他に代えがたい喜びでもあった。フライングディスク、カヌー等の講習会にはたびたび顔を出した。また経験の少なかった非常勤時代には、ある先生の展開する実習授業を、盗み見ることもあった。こうして私は、自分なりの工夫を取り入れつつ、実習授業にかかわってきた。授業中のいきいきとした学生たちの姿は、次の仕事へと私を動機付けるのに十分なものであった。

しかしその一方で、スポーツ実習科目は何を目指すべきなのだろうか、という疑問が、私の中で次第に大きなものとなっていった。必修から選択への移行は、その必要性がほとんど認められなくなったことを示しているのではないか。かつての「民主主義教育への貢献」に匹敵するような今日的な必要性とは、一体何か。こうした疑問を抱いていた頃、私は全国大学体育連合の存在を知った。この団体は日本の大学・短大の約半数が加盟する社団法人で、大学における体育・スポーツ教育の調査研究と、FD活動の支援等に、中心的な役割を果たしている。この団体の活動に学びつつ、私は、卓球を教材として展開したある授業実践の記録を、『体育・スポーツ教育』 (全国大学体育連合九州支部発行) に発表した。この論考がたまたま全国大学体育連合近畿支部長、柳田泰義先生の目に留まり、平成19年2月10日、大学体育連合近畿支部会での講演の機会をいただくこととなった。ただし、講演の聴衆は、長く大学体育にかかわられてこられた経験豊富な先生方である。柳田先生にお願いし、「講演」を「情報提供」に改称していただき、発表を行った。

今回発表した授業実践の要旨は、既知のスポーツを一度解体することから、今後のスポーツのあり方の模索については主体的に関与することが出来るのだ、ということを体感することを目指す、というものであった。発表後には、示唆に富む多くのご意見をいただくことができた。大げさに言えば、日本の大学の教養教育をよりよいものにするために、今後も実践、研究を積み重ね、積極的に「情報提供」活動を続けていきたいと考えている。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:27