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心理教育相談室の臨床相談員として


相澤 直樹

(総合人間科学研究科 発達臨床論講座 心理学)

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神戸大学 心理教育相談室

今回は、心理教育相談室における臨床相談員としての業務を紹介します。心理教育相談室は、神戸大学大学院総合人間科学研究科の付属施設である「発達支援インスティチュート」の一部門に位置づけられています (詳しくは心理教育相談室をご参照ください)。この相談室は、臨床心理士資格認定第1種指定校にかかわる実習施設であるとともに、地域社会に開かれた有料の相談室として機能しています。そのため、さまざまな年齢や立場の人が心理的問題の相談に訪れます。相談者との直接の面接には、研修生として登録している臨床心理学コースの大学院生が大学教員の指導の下に応対することになっています。臨床相談員の主な仕事としては、インテーク面接の実施、インテーク・カンファレンスへの参加、ケース・カンファレンスへの参加、研修生の指導などがあげられます。インテーク面接というのは、相談申し込み後に最初におこなう面接であり、研修生の陪席のもと教員が受け持つことになっています。完全予約制であり、おおむね1回1時間半から2時間程度の時間をかけて面接をおこないます。その中で、相談主訴、生育暦、治療暦、相談目標などを中心に詳しく相談者の話を聞いていきます。そのほか、心理療法ついて (相談室のシステムや約束事項についても) わかりやすく説明する必要があります。ただし、心理的な悩みをもつ人は、さまざまな不安や心配を抱えて不安定な心情にあるのが一般的です。なかには、自分では希望していないのに家族や関係者に連れてこられる人もいます。そのような背景事情をおっての相談となりますので、その点に最大限の配慮を払いつつ話を聞いていくということになります。

以上のようなインテーク面接が終了すると、その内容をまとめた資料をもとにインテーク・カンファレンスをおこないます。現在当相談室のシステムでは、週一回月曜日に教員と研修生の全員があつまって開催することになっています。この会議では、インテーク面接の内容をもとに、相談者の悩みがどのような事情 (多くの場合心の事情) で生じているかを皆で検討します。そして、それに基づいて心理療法の方向性と目標を模索するとともに、当相談室で相談を引き受けることがふさわしいかどうかについて話し合います。その結果、相談を受け付けることがふさわしいと判断した場合には、継続して担当する研修生を決定します。万一当相談室でお引き受けするのがふさわしくないと判断した場合、他所への紹介などを含めてフォーローアップを検討することになっています。

以上のほかに、個々の面接の内容に即して、教員と研修生が相互研鑽する機会が設けられています。これをケース・カンファレンスといい、インテーク・カンファレンスと同様に週1回月曜日に開催されています。そこでは、各研修生が持ち回りで自分の担当している相談者の面接について詳細な報告を行います。半年から1年程度継続している面接がほとんどですから、概ねその発表のみで1時間以上はかかってしまいます。その後、発表された面接について、相談者の心の状態や担当者の理解と対応について込み入った議論を行いますので、全体では3時間以上の時間が必要となります。研修生にとっても負担が大きいことは当然ではありますが、臨床相談員としても相当負担となるものです。しかしながら、現実の個々の人間を対象とする営みである以上、その点に力を抜くわけにはいかないと思っています。

また、面接は時々刻々と変化する関わりであり、インテーク・カンファレンスとケース・カンファレンスだけでは十分な指導をおこなうことができません。そのため、それ以外にも、個々の研修生に対する、個々の面接に応じた指導が必要となります。その代表が、教員による個々の研修生に対するスーパービジョンです。私は今現在その任にあたってはいませんので詳しくお話しすることはできないのですが、概ね大学院生の研修期間中に30回以上のスーパービジョンを実施することになっています。また、それ以外に急な研修生からの相談にも、その時その場で応じることができる体制をとっています。

参考リンク
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 心理教育相談室

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:27