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「サイエンスカフェ神戸」の運営に携わって


田中 成典

(人間環境学科 環境基礎論講座 理論生命科学)

写真
2007年1月27日に神戸酒心館で開催された
サイエンスカフェ神戸「地球温暖化問題を考えるII」の様子

「サイエンスカフェ神戸」は本学ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの研究プロジェクト「市民の科学に対する大学の支援に関する実践的研究」の活動の一環として、2005年10月より始まりました。歴史的には、パリで始まった「哲学カフェ」がイギリスに飛び火して1998年頃よりリーズで「サイエンスカフェ」の試みがスタートしたと言われています。その後、世界各地に波及し、2004年頃から日本でも主に大学を核として大小様々な形で開催され始めました。一般にサイエンスカフェは、「科学者などの専門家と一般の市民が飲み物を片手に気軽に科学などの話題について自由に語り合う新しいコミュニケーションの場」などと定義づけられています。現在日本各地で活発に展開されているサイエンスカフェの試みは、現代社会において、特に科学技術の面で、専門家 (科学者、研究者) と非専門家 (一般市民) の間に大きく生じてしまった様々な「ギャップ」を少しでも埋めていこうという、主に専門家側からの働きかけと見ることもできるでしょう。

一昨年の夏頃に、現在「サイエンスカフェ神戸」の代表をしておられる伊藤真之先生らと開催の企画を練り始めた際、特に、神戸という素晴らしい街に「科学を皆で語り合う」という新しい文化を根付かせたい、という思いを共有しました。この神戸という街には、日本の他のどこにもない、ハイカラで洒落た文化風土があります。震災は街に大きな打撃を与えましたが、それにより人々の絆は以前にも増して強まりました。神戸の持つこうした独自のソーシャル・キャピタルを活用し、「サイエンス」を核としていかに新しい時代の「コミュニティ」の姿を社会に向けて提案・発信できるか、という試みを「サイエンスカフェ」の形を通じて実践しようと考えたのです。さらに私自身の個人的な理想としては、いずれは毎日のように街のどこかのカフェで自然と人々が科学技術を語り合い、必要とあれば専門家が駆り出されて新聞等で意見を述べ、重要な問題についてはインターネットで議論が交わされる、といった新しい社会システムが神戸を舞台として実現されないか、というようなことを夢見ています。

最初はとにかく回数をこなして様々な可能性を試してみたいということで、2007年1月現在で既に30を超えるテーマについてゲストをお招きしカフェを開催しました。テーマも宇宙や素粒子から半導体、電気工学、光化学、分子生物学、環境問題に至るまで広範にわたっており、今後は哲学的・政治的な話題やアートの領域にも広げてゆきたいと考えています。「専門家と非専門家の間をつなぐ」コミュニケータ的な若い人材の養成も重要なポイントであり、学生の皆さんの積極的な参加を期待しています。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:26