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感性と科学、そして技術へ


山本 道子

(人間表現学科 人間表現論講座 感性心理学)

平成16年度から、ユーザーサイエンス機構 (略称: USI) の中の感性ユーザーインターフェース研究会の研究メンバーとして活動している。これは文部科学省が推進する科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成プログラム (通称: スーパーCEO)」に採択された九州大学の大型プロジェクトである。感性の研究が盛んになったのはここ10数年のことである。よってこの分野は情報科学や工学、心理学、といった様々な分野が関わる学際的研究分野である。本稿では、未だに市民権を得たとは言いがたいこの感性に関わる研究について紹介する。

写真
『ユーザーサイエンスの胎動』
(九州大学ユーザーサイエンス機構)

現在の感性研究には、日本の工業生産や経済の歴史的背景が深く関わっている。戦後の高度成長の時代、日本人は、豊かな社会を目指しモノ作りに勤しんできた。その成果が実り、暮らしの中にはいつしかモノが溢れ、豊かで便利な生活を手に入れたかに思えた。しかしバブルの崩壊、その後の経済の低迷する中で、今度はモノが売れない時代がやってきた。

ではなぜ売れなくなったのか? 三種の神器と言われたテレビや冷蔵庫を買う昭和の時代の消費者と、現在の消費者の違いは何であろうか? これはモノの価値やそれを決める消費者の価値観が時代とともに大きく変化したからに他ならない。モノが十分ではなかった時代、消費者は実用性や安全性といった科学的客観性に基づいた価値観によって、モノの価値を判断していた。しかしモノが満たされると、消費者の価値観は美しさや使いやすさといった感覚的主観性に重きを移し、モノは文化的、感性的価値を求められるようになった。さらに最近では消費者の価値観の多様化が進み事態は複雑化している。

このような社会の変化の中で注目を集めだしたのが感性の研究である。これまでの工業生産における研究は、メーカーが思い描くモノを作るためにはどうしたらよいのかという、技術が中心の研究であった。しかし今後は、消費者である「ユーザー」の感性とこれまでの技術を融合させ新しい観点から研究開発を行なうことが重要である。

研究会では複数の大学の異なる分野の研究者と企業の研究者が一緒になって、感性工学によって商品を開発するとき、どのように消費者の感性に合う設計をするかについての議論や、感性に関する知見から実際に事業化をする方法論の検討、感性情報処理に関わる各専門分野における研究動向の集約などを行ないながら、次の研究ドメインの発案やプロジェクトの企画を行なっている。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:25