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文化財としてのモダニズム建築の保存を訴える国際NGO "DOCOMOMO" とドコモモ・ジャパン


梅宮 弘光

(人間表現学科 人間表現論講座 建築史)

日本の建築界では、今やドコモモは携帯電話会社と同じくらい有名だ。しかし、世間一般では、まだまだ。フルネームはDocumentation and Conservationof buildings, sites and neighbourhoods of the Modern Movement、頭文字をとってDOCOMOMO。日本語ではもっぱら「モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織」と訳される。

ポスター
「文化遺産としてのモダニズム建築DOCOMOMO100選展 in 大阪」
(2006年9月25日~11月5日、大阪市立住まいのミュージアム) ポスター

オランダのアイントホーヘン工科大学のヤン・ヘンケット教授 (現デルフト工科大学教授) の提唱で1988年に設立された。1990年に第1回総会が開催されて以来拡大を続け、ワーキング・パーティと呼ばれる支部は全世界に49。日本支部であるドコモモ・ジャパンは2000年にブラジリアで開催された世界総会で承認され、アジア地域で最初の正式メンバーとなった。私はこの支部設立に際して参加し、以来いくつかのイベントに関わってきた。

貴重な文化環境や自然環境を人類共通の財産として大切にし次代に引き継いでいこうという文化財の思想は、世界遺産などを通して広く認識されている。その趨勢にあって、モダン・ムーブメントはいささか分が悪い。考えられる要因は、とりあえず二つ。無定見な開発の中でそうした文化財を破壊してきた元凶ではなかったか、というもの。そして、単純で素っ気ないその相貌が風景を画一化してしまったというもの。ともに短絡に過ぎる誤解である。ドコモモが標榜するモダン・ムーブメントは、強引なグローバル化のそれではなく、地域性の上に花開いたワールドワイドなものなのである。

このスタンスから、ドコモモ本部は各支部に1920年から69年までに建設されて現存する20の事例選定を要請した。そうして選定された各国のモダン・ムーブメントは、それぞれの地域における独自の近代を雄弁に語っている。この事例選定は2003年には100件に拡張され、さらに共通性と多様性がともに鮮明になった。地元神戸からは、「神戸ポートタワー」 (1963年) と、「日本真珠会館」 (1952年) が選ばれた。有名/無名の好対照だが、ともにそれぞれの時代状況をよく体現するものである。

こうした事例を広く知ってもらい理解を広めることは、ドコモモの重要な使命である。ドコモモ・ジャパンは2005年に東京で「文化遺産としてのモダニズム建築DOCOMOMO100選展」を開催、2006年9月には大阪にも巡回させた。テレビや一般紙でも大きく紹介され、建築の展覧会としては異例の動員を記録した。私は大阪展に実行委員のひとりとして関わり、関連企画の講演で渋すぎる佳作「日本真珠会館」の魅力と背景を紹介した。聴衆は、一見して建築学生か設計者と思しき比較的若い方々と、最近増加しつつある年配の近代建築ファンが半々といったところ。講演後にギャラリーに移動して行われたフリートークではともに大いに盛り上がった。専門家も愛好者も、それぞれの視点と文脈でモダニズム建築の魅力を感じているところが素晴らしい。専門的な調査研究を進めると同時に、それを開いていくことの大切さを再認識した一時だった。今年は、ドコモモ・ジャパンと日本建築学会との連絡・調整のために学会内に設置されているワーキング・グループ委員としても活動する。

写真
日本真珠会館
(1952年、神戸市中央区、設計=兵庫県建築部営繕課: 光安義光)
ドコモモ・ジャパン
http://www.docomomojapan.com/index_jp.html
ドコモモ・インターナショナル
http://www.archi.fr/DOCOMOMO/index2.htm

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:19