本ウェブサイトは2012年3月末をもって閉鎖いたしました。このページに掲載している内容は閉鎖時点のものです。[2012年3月]

「思いやり格差社会」、利他主義、援助行動を見つめて


稲場 圭信

(人間行動学科 行動発達論 宗教社会学)

写真
ロンドンでの募金活動

ある知人が、「自分が得することだけを考えて行動する人、自分のことだけを考えて何が悪いという人は、人間として終わっているのではないか」と言いました。人間性の喪失です。愚かな人間が損をするのだ、自己責任だ、と自分のことしか考えない自己実現や成功者という言葉に酔いしれる実業家がいます。自分の利益と豊かな老後だけを考える人がいます。日本という国で日本国民から得た収益、それを高い税金で取られてはたまらないと海外に拠点をうつす企業、資産家もいます。一方で、時には自分を犠牲にしてまでも他者のために行動をする人がいます。忙しい日常のなかで少しの時間でも他者のためにボランティア活動をする人がいます。日々、小さな親切を実践する人もいます。

このような、他者への思いやりを持つ人と持たない人、その度合いに格差が生じているという日常的な実感から、私は「思いやり格差社会」という言葉で社会の現状と未来を見据え、宗教社会学・社会心理学の立場から利他主義・援助行動の研究を進めています。小さな営みであっても、自らの研究が社会貢献につながるとの信念を持っています。

2004年からNPO東灘地域助け合いネットワークの理事として微力ながら地域に関わっています。2006年からは神戸市の助成金により阪神御影市場「旨水館」をフィールドとして、発達科学部の先生方にもご協力を頂きながら、市場周辺の活性化という社会貢献に参画しています。2005年1月には阪神御影駅前で募金活動のボランティアに妻と娘と一緒に参加しました。娘は1歳8ヶ月でボランティア活動に参加です。小さい時から親と一緒にボランティア活動をする、欧米社会では日常的に見られる光景です。思いやりの心を育てるには、思いやりの行動の実践者、ロールモデルとのコンタクトが必要なのです。

自分のことばかり考えるという状況は精神衛生上よくありません。自分のことは確かに大事ですが、その中に他人への思いやりを少し入れることによって、自分自身が解放されます。自分も健康になり、社会全体もよくなっていく、理想に向かって地道に確かな歩みを進めたいと思っています。

以下のようなサイトも運営しています。

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:19