学校・家庭・地域での食育推進活動と栄養教諭制度創設までの道のり
丸谷 宣子
(人間環境学科 環境形成論講座 家庭科教育学)
教室にて
文部科学省・地方自治体の教育審議会委員、および健康・食育研究推進事業実践校での指導助言者の委託を20年余り引き受けてきた。後者については、小・中学校で、地域の実態に応じた健康・食育に関する啓蒙活動と学校食育への指導助言を行っている。
10数年前から、こどもの心身の健康問題が深刻さを増していた中で、平成15年、「文科省中央教育審議会」では、その対応施策として栄養教諭制度の創設が審議課題となった。そこでは、学校現場での教育実践を踏まえて、一委員として栄養教諭の必要性と制度の詳細についての審議に加わり、さらに、法案のもとになる中央教育審議会答申 (案) の作成にも関わった。国会決議を経て、平成17年、栄養教諭制度が誕生し、わが国の食育におけるマンパワーの位置づけが一歩進むこととなった。
このような食育の光の蔭で、印象に残っているのは、平成8年、学校給食による病原性大腸菌O157食中毒事件の直後、大阪府と堺市教育委員会が開催した「学校給食の安全性に関わる検討委員会」の活動である。一委員として、安全な給食制度の再構築についての会議に参加し、なかでも学校栄養士の自信回復のために、新しい食品衛生や給食システムを学び直す講座の開催をはじめとして、安全な給食システムの再構築に自信を持って参加できるような支援策を提案した。やがて、堺市では宇宙食製造を手本としたHACCP (ハセップ) による安全管理システムの導入なども実現したが、学びを深めた栄養士はこれをよく理解し、今も衛生管理を徹底している。
子どもが描いた朝食風景
阪神大震災時には、学校給食設備を活用した炊き出し、やがて1ヶ月ほど経過すると、救援物資の間食食べ放題に陥る子どもの食育など、災害時の食育も経験した。その前後3年間、電車を乗りついで通った滋賀県大滝小学校が「学校・家庭・地域を連携した食育」で文部科学大臣賞を受賞したことが思い出に残っている。以上の他に、文科省が全国の小中学生全員に配布した食生活学習教材の編纂、管理栄養士・栄養教諭養成大学用の教科書の編纂、文科省・自治体の教職員研修などを行っている。その他、神戸市シルバーカレッジでの高齢者の食育、コープ神戸の食育推進グループ勉強会等での講師も勤めてきた。
Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:23