スクールカウンセラーの役割
吉田 圭吾
(総合人間科学研究科 発達臨床論講座 心理学)
著者近影
学校現場にスクールカウンセラーが入るようになってかなりの年数が経過した。制度としてまだまだ問題を孕んでいるとはいえ、一定の成果をあげているということができるだろう。スクールカウンセラーは、平成7年度から12年度まで文部科学省の委託事業として始まり、平成13年度から都道府県の事業として現在まで定着している。
児童生徒の不登校、暴力行為、いじめなどの子どもたちの問題行動を未然に防いだり早期発見して対応し早期解決するために、「心の専門家」であるスクールカウンセラーが配置され、学校現場の中に、児童生徒が安心して相談し、悩みや不安ストレスを解決するとともに、教師や保護者に助言をする役割が与えられている。
その結果、スクールカウンセラーの努力と教師や保護者の努力により、平成13年度から不登校児童生徒数は、徐々に減り始めている。昨年末のいじめによる自殺事件の多発に伴い、この1月からさらにスクールカウンセラーを増やし、教育相談の受け皿を徹底する一方で、24時間体制のいじめ電話相談にも配置し、いじめによる自殺を未然に防ぐ体制を整えている。
それまでの教師による「指導」体制によるアプローチに加えて、「心の専門家」による相談を加えることによって、学校における教育相談体制は充実化が図られている。スクールカウンセラーがなぜ必要かといえば、不登校や拒食症、リストカット症候群などの精神障害を抱える児童生徒の増加、また学習障害、注意欠陥多動症候群、高機能自閉症などの発達障害を抱える児童生徒の増加により、教育の専門家の教師だけでは対応できない事例が増えてきたことが理由として挙げられる。精神障害や発達障害の知識を持ち、実際の事例に対して援助を与える能力を持つ臨床心理士が活躍する現場として、学校が数えられるようになったのである。
まだまだ教師とスクールカウンセラーとの連携の仕方や、子どもや保護者に対するスクールカウンセラーの存在の周知徹底、学校におけるスクールカウンセラーへの子どもや保護者の相談経路などの問題が残っている。学校現場に第3者が入り込むことへの先生方の抵抗もあり、スクールカウンセラー自体もよって立つカウンセリング理論によって援助できる内容や質が異なることへの学校現場の戸惑いもある。
しかし、そのような問題を乗り越え、悩める子どもたちや保護者にとって十分な教育相談体制が達成できるように、教師もカウンセラーも協力し合って努力していくことが必要であろう。
Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:25