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研究会の運営を通して


谷 冬彦

(人間形成学科 発達基礎論講座 心理学)

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講演会「科学とニセ科学」

私は、2001年度から、神戸大学 Human Science Society (HuSS; ハス <http://www2.kobe-u.ac.jp/~ftani/HuSS.html>)という研究会を運営している。HuSSでは、心理学をはじめとしながらも、広く人間科学・人文科学系等の学問を自由に研究する場を提供することを目的として、神戸大学発達科学部および大学院総合人間科学研究科の心理学系教官や学生が中心となって、定期的に研究会を行っている。HuSSは、純粋に学問を追究する会なので、参加に関して何の制約もない。それゆえ、関心のある方は、どんな方でも参加は自由で、外に開かれた研究会となっている。これまでも、多くの学外の方々が参加しており、外部の大学教員や大学院生、学部生だけでなく、一般の方々も参加している。また、HuSSでは、研究会だけでなく、外部の先生をお招きして、一般の方々にも開かれた形の公開講演会の開催も行っている。

さて、これまでのHuSSの研究会や講演会では、心理学のテーマがほとんどになってしまっていた。しかし、もともと本研究会は、広く学問に関するテーマを対象にしている。そのため、今年度は「科学」という広い視野で講演会を開きたいと考え、大阪大学サイバーメディアセンター教授の菊池誠先生を講師に迎え、HuSS主催の第3回公開講演会として「科学とニセ科学」という講演会を行うことを企画した。

菊池先生は、統計物理学を専門としているが、「ニセ科学」の問題についても関心を持たれており、その問題に関する造詣が深い。また、菊池先生は、2006年12月に放送されたNHK「視点・論点」に出演し、「まん延するニセ科学」というテーマで語ったところ、この番組は、ネット上で大反響を呼び、多くのBBSやブログ等で取り上げられた。それゆえ、2007年1月30日に開催された今回の公開講演会は、タイムリーなものであり、問い合わせが非常に多く、講演会参加者は外部の方々が約半数を占めた。

講演会では、血液型性格判断、七田式、マイナスイオン、ゲルマニウム商品、ゲーム脳、EM菌、「水からの伝言」といったニセ科学の現状を概観するとともに、それに対する科学者の取り組みや批判活動の在り方などについて詳しく論じられた。特に、菊池先生が、「ニセ科学」の批判にとどまらず、ニセ科学信奉者との対話を通して、ニセ科学の問題に対処しようとしているという話は、大変印象深く拝聴した。なお、参加者からの質問も積極的に出され、非常に有意義な議論がなされた。講演会後の懇親会でも、一般の方々が約半数を占めるなど、大好評のうちに本講演会は終わった。

今回の公開講演会は、科学を装ったニセ科学が身近に多く存在し、それを信じてしまいがちなことを一般の方々に広めるという意味で、社会貢献として大きな意義があったと思われる。有り難いことに、講演会後、外部の方々から私宛にお礼のメールも何通かいただいた。今後もHuSSでは、外に開かれた形で運営してゆき、学問的な成果を外に向けて発信し、研究上の成果を社会に還元するということを考えてゆきたいと思う。

なお、以下は、菊池先生の「ニセ科学」の関連サイトである。ご関心のある方は、ご覧いただければと思う。

ニセ科学関連文書
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/
ニセ科学に関する菊池先生のブログ
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/

Updated: 2009/09/17 (Thu) 10:28